青年は就職活動に失敗し、真に自分がなりたかった職業に就こうと思った。魔法少女である。
当然のごとく失敗するが、青年キワムは奇策に出た。―ーサンタクロースを捕獲して自分の願いをかなえさせようとしたのだ。
いろいろあってキワムは魔法少女にしてもらえなかったが(そりゃそうだろ)、なぜか魔法少女の世話役的ポジションにおさまり、彼の周囲に魔法少女たちが集まることとなる。
ここから夢のごときやれやれ系ハーレムが進行する……と思った人は読みやめたほうがよい。
むしろヒーロー不在で乙女たちがきゃっきゃうふふ……を期待した人、それは多少含まれている。化粧水のサンプル分くらい。
作者頻出のメタ表現は、衒学的というより、照れ隠しのようでおかしみがある。
話は進む。
夢やぶれる失望がある。寸劇のような日常がある。軽躁と多幸。戦闘と敗走。これでまあ50話。長っ。
「ーー俺はこう答えた。運命自体は残酷だが、少女たちにひと時の夢を見せることは残酷ではない。むしろ、通過儀礼として、夢と現実を区別するために必要なものだと。 (11thこんたくと)」
この物語が、単なる願望充足メタフィクションでないとはっきり確信したエピソードである。(この回はなかなかの名エピソードじゃないかな)
私は作品の奥底に流れる水を汲み取ったと思う。それを探しに行く90話だった。
作者の健闘をたたえたい。