カウント 4

『どうやらその形態は燃費が悪いようですが』


「分かってますよ!」


 タイプ・ミラクル自体が燃費が悪いわけではなく、みんなを実体化させるのにどうもかなりの魔力を使うようです。


『まあ、いまだそっち側に依存するのであれば世界に邪魔されるということなのでしょうけど――ちょっとおさるさんには偏差値が高かったですか?』


「なんだか某宇宙最強の白い方みたいですね――あれ?でも、お父様の方が強かったんですっけ?」


 先ほど倒したワームがまた甦ります。


 再び、みんなの悲鳴を聞くことになると思うと、胸が苦しくなります。


 人が死ぬときというのは「キャー」とか「うわー」とか、そんな悲鳴を上げるのではないのです。


 喉からそのまま空気が抜ける音や、カエルのような、まるっきりカエルの鳴き声のような声が聞こえます。


「うぅ――」


 うげっ。


 私の喉の奥からも、カエルのような鳴き声が響きました。


「やっとみんなと一緒になれた……」


 喉の奥がヒリヒリして、けれども喉の奥に手が届かなくて、それがとてももどかしくって。


『よそ見している暇はないと思いますよ』


 私の頬を明るい光が照らします。


『何度も生き返らせていれば、魔法の一つや二つ、使えるようになるようですね』


 私は奥歯を強く噛みしめました。


 それはあまりにもひどい。


 待ち遠しき夜明けロストは殺されたときの記憶をそのままにワームを復活させているのです。そして、復活するたびにワームは憎しみに深く取り込まれ、ヒトとしての理性を無くしていく――


「コロネちゃん!よろしくお願いします!」


 私の隣にコロネちゃんが並びました。


 相対するワームはコロネちゃん。コロネちゃん特製の強大な魔砲を私たちに打ち込もうとしているようでした。


「やっと本編になることができると思ったのに、残念ですね」


 全くだ、といった風に私の隣のコロネちゃんは落ち込んでいる素振りを見せました。しかし、すぐに明るいコロネちゃんに戻って、ワームと対峙します。


「滅びのバーストストリーム!」


 コロネちゃんワームが魔砲を放つのと同時に私たちは魔砲を放ちます。


 魔砲はぶつかり、干渉によって相殺されます。


 でも――


 強化された私たちの魔砲はコロネちゃんワームの放った魔砲に打ち勝ちます。


「魔法の干渉設定はどこに行ったのでしょうかっ!」


『確か、2倍以上の差があれば打ち勝つんじゃなかったですっけ』


 どうしてか、私は待ち遠しき夜明けロストと一緒に首をかしげることになってしまいました。


「まあ、コロネちゃんですし」


 その一言で納得してしまうから、不思議です。


 敵さんは待ってはくれません。


 空から大量の隕石が落ちてきます。


「これはメテオですかっ!FFなんですかっ!ソラさんっ!」


 ソラさんらしい、無茶苦茶な攻撃でした。


 ソラさんワームの頭から魔法の光が出ていました。


「よろしくお願いします!ソラさん!」


 コロネちゃんと入れ替わり、ソラさんが現れます。ソラさんと私は手を繋ぎ、つないだ手を空に掲げます。


「これって、あれですよね。Gガンの最終話で見た――」


 私たちの背後に超巨大なダビデ像が現れました。


 ダビデ像は隕石を素手で砕いていきます。


「いや……だから、具現化系はものを動かすことができないんですけど!それは変化系か変質系の魔法を使っていることになるんですけど!」


 どうやらシリアス展開には染まらない、何でもあり回のようです。


 隕石を全て打ち砕いたダビデ像はソラさんワームの頭部を殴りつけます。


 ぐしゃり。


 ワームから赤い体液がこぼれ出ます。バケツを溢したような雨が私のもとに降り注ぎます。


「雨は誰の下にも平等に降り注ぎますものね」


 私が今まで殺してきたのは人間だったものたちだったことを自覚して、つい、地面にひざをついてしまいたくなります。でも、私の隣には一才年下の女の子が立っていました。年下なのに、とても頼りになって、でも、時々苦手なこともあったりして――


 血の雨が形を成します。罪を懺悔せよとでも言うように杭の形をなしていました。


 変化系の魔法――アオちゃんワームの力でしょう。


「アオちゃん!お願いします!」


 アオちゃんは風のように踊ります。ただ、踊っているだけだというのに、そこに風が産まれ、風から音楽が聞こえてきます。


 音は血の杭を切り刻み、杭の向こうのアオちゃんワームさえも切り刻みました。


 体を切り刻まれる姿が、アオちゃんの姿が映ったように見えて――


 ぽかっ。


 そんな私は頭をバトンで叩かれてしまいます。


 こんなことをするのは一人しかいません。


「ミワちゃん……」


 ミワちゃんはまさにツンデレといった感じでそっぽを向きます。


「でも、ツンデレ枠をコルトに奪われましたよね……」


 余計なことを言うんじゃないという風にミワちゃんはバトンを振りかざしてきます。


 そんな二人の間を裂くように残されたミワちゃんワームが攻撃を仕掛けます。


 ミワちゃんワームは某世界的人気ゲームのキャラクターのように火炎放射だ!をしました。


「最近ポケモンカードが流行っているみたいですね。まあ、作者はウィクロスなのですが。というか、密かに私たちを使ってオリジナルウィクロスを作ろうとか考えていたりするのは恐ろしいです」


『まあ、投稿できてハーメルンでしょうが』


「というか、もう終わりが近いからって魔法の設定無茶苦茶過ぎません!?確かに変質系はなかなか攻撃に活用しづらいですし、きっとなにかを変質させたんでしょうけど……」


『変質系の魔法で魔法少女を魔法少年にするのもアリですね』


「しれっと余計なことを言わないでください!彼女が出てくるんです!」



 結局出てきてしまいました。


 名前も知らないということにしておきたい、2年前くらいの魔法少女の先輩。


「行きますよ!ミワちゃん――!」




 私たちの戦いはここからです!




 竹内緋色先生の次回作にご期待ください!




「ラスボス前に終わるとか、最悪じゃない?それと、外伝で言っているけれど、ミワは死んでないから!あの関西弁女に無理矢理ベッドに押し込まれただけだから!だって、枕の中におにいちゃんのパンツを押し込まれたら、もうベッドから出ることなんてできないじゃないっ!ああ、オスの匂いが――」




『結局この回は何だったのでしょう、とラスボスの私が言いたくなりますが――ラスボスは俺妹的にやっぱり幼なじみなのでしょうか。いえ、そう言えば幼なじみなんていませんでしたね』


 ごほん、と待ち遠しき夜明けロストはわざとらしく咳払いをします。


『お戯れはお終いとしましょう。とうとうやっと、世界を終らせる時が来ましたし、今、あなたはこう思っているのでしょう?「はやくこんな苦しみから解放されたい」と。確かに、私がその元凶なわけですが――』


 確かに私は――苦しみから解放されたいと思いました。


 私は――待ち遠しき夜明けロストの言葉を聞いて何かを感じ取りそうでした。


『私は全てを終らせる存在。その名を饗宴の始まりロスト

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