第二十二羽 戦う交通安全
第二十二羽 戦う交通安全
「今日は交通安全教室を行います。特別ゲストは本校の魔法少女の皆さんです!」
休日のグラウンドで小学五年生が自転車を片手に集まり、何故か魔法少女たちは小学五年生たちの前に立っている。
その中にいないのはアオだけだった。
「戦う交通安全って言っても今思えば一般市民が、それもただの自動車整備員が交通安全のために戦ってもな、とすごく思うぞ!」
「いやな、俺が言うのもなんだけど、これ、外伝でやるべき内容なんじゃねえかって気がしてきたぞ」
「どうしてあんたがここに?」
「俺だってたまの休日くらいはゆっくりとしていたかったんだよ」
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コルトの場合
「ねえ、芋羊羹が食べたいと思わない?」
「突然どうしたんだよ。ピース」
「そう呼ばれると煙草の銘柄みたいね」
「せめて漫才コンビにしておけよ」
「私は世の中を騒がせるつもりがないの。だから、芋羊羹が食べたい」
「なあ、ピースメイカー。そういうのを迷言って言うんだぜ」
「みなさん?ワープロで『めい』って打ってみなさいな。変換すると五月って出てくるわ。なんだかとても時代を感じない?だから、芋羊羹が食べたいの」
「あのな……」
ピースメイカーはコルトを睨む。
「いいわね?買ってきなさい」
魔女の中でも最強の力を持つピースメイカーにコルトが逆らえようもなかった。
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「で、偶然見つけたのがお前たちだったわけだ」
「戦う交通安全ね」
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魔法少女たちの場合
「魔法少女はアイドル活動略してアイカツ!をしているという設定があったパフ」
「なかった、なかった」
「というか、よく具体名を出そうと思ったわね」
「作者がプリティーシリーズ派だからパフ」
「関係なくないですか?それ」
「ともかく、みんなには魔法少女の宣伝も兼ねて、交通安全教室に出てもらいたいパフ」
するとアオは体をびくつかせる。
「でも、私たち、何もできませんよ?」
「アイドルなんて前に出てヘラヘラしているだけの職業パフ」
「アンタ、アンチに晒せれてもいいの?」
「それでアクセスが増えてパフィーが人気者になるなら全てがまあるく収まるパフ」
「コロネ以上に下衆ね」
「まるでコロネちゃんが下衆みたいな言い方だな」
「ということで本日よろしくパフ」
「今日なんて聞いてないわよ!?」
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「今日のテーマは戦う交通安全です」
「警察の方まで妖精に洗脳されてるわよ」
「自転車を安全に乗るために、ということでサットのみなさんにお越しいただきました!」
「特殊部隊がなんで来てるの?というか、今日ずっとわたしツッコミ役なのかしら。フキもちょっとは手伝ってくれない?」
「すいません。私は外伝要員じゃないので」
「わたしだって外伝要員じゃないわよ」
ソラは肩を下ろす。
「まず、狙撃の基本は――」
「ちょっとストップ!今日、何故だか全体的にボケボケだけど、ちょっと子どもに狙撃の仕方を教えるのはブラックじゃないかしら?」
「なるほど!コロネちゃんの出番だな」
嫌な予感しかしない、と一同青ざめる。
「おら!やろうども!祭りだ!」
サットのみなさんが悪ノリをする。
フキは魔法で粛清する。
「なんかもう、今日の役目を終えた気がします」
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アオは緊張していた。
先日コルトとフキの手助けもあって自転車に乗ることができたものの、やはりまだ下手であるという意識が深く残っていたからだ。
だが、先輩魔法少女たちがバカ騒ぎをしているのを見て、緊張がほぐれたのだった。
「ま、その調子だったら大丈夫だな」
コルトはアオが心配ないと判断するとグラウンドを後にしようとした。
そんな時である。
「どいてどいて!」
食パンを加えたコロネがコルトに向かっていく。
そして、強烈なタックルを食らわせた。
「うそ、だろ……」
コロネの頭部がコルトの鳩尾に突き刺さる。
コルトの胸からガラス玉が一つ落っこちた。
地面に叩きつけられてぱかりと割れる。
ずごごごご。
きしえぇえぇえぇえぇえぇえぇ!
「どうして擬音ばかりになったんだ?」
「いやあ、ちょっと話題みたいだから」
たらたらたららん。
「一応変身音だな」
「ゼルダの伝説の例の音と似ているとかの批判は受け付けないからな」
ぐおん、ぐおん。
どびゅっ。
びゅくっびゅくっ。
「とても子どもには見せられない音がしているぞ」
「今さらでしょ」
ずばぴょーん!
ぴょんぴょんぴょん。
ずごごごごごご。
「音だけでとてもよく分かるな。ちなみにさっきのはフキの鼻息の音だからな」
「変なこと言わないでください」
どっどっどっどどどど。
ひーひーひーひーひー。
ふぉんふぉんふぉんふぉんふぉんふぉん。
てれれれれってってー。
「なあ、今からでも遅くないから外伝に移行したらどうだ?」
「なんでおにいちゃんが出ないの?ミワ帰る!というか、妖精と契約してないんだから、ミワ、別に来なくてもよかったよね。おにいちゃんのエキスで白ご飯食べよーっと」
「時々出る、ミワのえげつない変態感」
ぎゅいんぎゅいん。
どっどーん。
「何が起きたの!?」
「真・コロネちゃんロボの登場なのだ!」
ぼこすかとんとん。
たららららったったー。
しゃきーん。
あたたたたたたた。
「なんだか時々変な音入るわよね」
「おい、デク人形。それは俺の芋羊羹だ」
ぐんぐんぐん。
しゅわっち。
「しゅわっちってさ、ウルトラマン、一、二回しか言ってないの。でもすっごく発音が良くって。ほんと、外国語みたいに聞こえちゃうの」
「ミワちゃん、巨大化したキワムさんを見て涎を垂らしています。というか、なんでキワムさん、巨大化してるんですか!?」
本官を差し置いてロボット大戦をすることはゆるされなーい!
「そろそろスーパー戦隊ロボット大戦があってもいいと思うな、ミワは。でも、最強はおにいちゃんだからね!とっきゅーおーにも負けないたくましい――」
「はーい、そこまで!製作側もなんであんな大人のネタにしかされないことをするのかしら」
どんどんどんどん。
とぅるるるるるるる。
しゅいん。
とろろろろろろろろ。
***********
「で?芋羊羹を食べられてしまったと」
「いや、戦闘シーン、あれでよかったのかよ」
「だって、ネタ回だもの。別にいいじゃない」
「だから、そういうのは外伝でやれっての」
「別に私は外伝にすら出ていないからって拗ねてるわけじゃないの。イメージ的にコルト以外の魔女は顔に影がかかってて顔が見えないみたいな感じなのだけど、女の子としてはほんとうにどうかと思うわ」
「俺に言うなよ。照れるだろ」
「何で照れてるのかしら?ネタ回だから?」
「さて、残りの休日を楽しむか」
「まだ芋羊羹を食べられたことについてのお説教は終わってないのだけれど?」
次回予告
ご愛読ありがとうございました。
竹内緋色先生の次回作にご期待ください。
『次回、例え魔女であっても集英社には喧嘩を売らない』
ジガ……
命令者ちゃんに光を!
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