Draw Dream 3
金田さんを講義室に連れて、話した。3人は、頷きながら黙って聞いてくれた。
「どうしてコソコソ調べていたの?」
元気が聞く。城崎君が元気をにらみつけた。
「2人は画用紙を持っている?」
「いえ」
高瀬先輩の問いに元気たちはそう答える。
「なら、一緒に行くわけにもいかないね。絵を描く気のない人はいてはいけないのだから。ただでさえ小倉さんと牧羽さんが似たような方法で入り込んでいる。俺たちまで行くとますます怪しまれるよ」
「あ、そうですね」
元気があっけらかんと言う。代わりに城崎君が提案を始めた。
「僕たちは遠くから覗いてみる方がいいと思います。美術室だから中庭を挟んで反対側の、3年生の教室前とかはどうですか?」
「そうだね。ただ、向こうからも見えるから、何か別の活動をしていることにしておいたほうがいい。2人の口実にもしやすいから」
「各教室のごみの点検とかはどうですかね?」
「そういえば先生があまり来ないせいか、美術室はあまり掃除していないような……そういうことでもいいの?」
元気の提案に金田さんが聞く。2人は塾が一緒らしく、知り合いらしい。
「なら、教室の清掃状況を調べる、という口実ができる。俺が田村先生に話してくるよ。
それから、テニス部にも中庭の練習頻度とか聞いてきたほうがいい。阿部倉さんのいる時間とテニス部の中庭での活動時間が本当に被っているのか」
「小倉、その辺りはどうなんだ?」
城崎君に話題を振られて答える。
「え、えっと、雨が降っているわけじゃなければ誰かしらはいるよ。晴れや曇りの日は1年生が素振りしたり、打ち合いしていたり。雨が降った直後だと、コートが使えないから上級生も中庭で練習するんだって。テニス部の子から聞いたよ」
「実際、そうだと思います」
金田さんも援護する。
「なら話が早い。マスだけが印刷されたコピー用紙でも挟んであるバインダーを持っていればいくらでも言い逃れできるし」
「えっ?」
驚く私をよそに、高瀬先輩は1枚の紙を取り出した。
「阿部倉だったら知ってるし、テニス部の同級生のことは2人で大体わかります」
「ほら」と城崎君が元気を引っ張っていく。高瀬先輩も立ち上がった。
「あとで牧羽さんにも聞くけど、依頼を受けた時、一言でも言ってくれた?」
何も言っていない。「すみません」と小声になってしまう。
「知られたくない場合だってあるだろう。けれど、引き受けていることだけでも、知らせてくれないと」
「そうだよ。澄香と牧羽さんが出て行ったあと3人で話したんだよ。最近何か隠れてやっているよねって」
ギュッと心臓の音が跳ね上がる。
「もしかして、誰かに脅されて口止めされているんじゃないか、とか、危ないことをしようとしているんじゃないかって、みんな心配していたんだよ。それに、大事な企画が始まるんだし」
「大事な企画?」
「新聞だと、結果とか、一部の人のコメントしか載せられないからさ。なるべく多くの人の声を集めようって事で、総合体育大会または夏のコンクールに参加した生徒全員にコメントを書いてもらって、見てもらおうよって」
それは初耳だった。
「いつの間に?」
「まだ決定していないけどさ」
城崎君がつけ加える。
「澄香は、どう思う?」
「……いいね」
ちょっとだけ、研究部の活動が楽しみになった気がする。
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