第11話 愛歌と疵瑕
パークに勤め始めて二年ほど経ち、フレンズの扱いに少し慣れ始めてきた頃合いで、フレンズ化したばかりでパークのことも自分のことも、右も左もわからないアカギツネの世話をすることになった。
(ちなみに、新人のうちはフレンズ化から時間が経ったフレンズを担当して慣れさせてから、生まれたて?のフレンズや野良出身のフレンズ担当に変えることが多いらしい)
目つきが鋭くて口数が多いわけでもないレイに対して最初は警戒していたものの、アカギツネは徐々に彼に慣れていき、というか一方的に馴れ合っていき……。
なぜか最終的には求愛するに至っているらしい。が、一向に相手にされていない様子である。アカギツネはめげずに今日も抱きつこうとしたり甘い声を出したりしているわけだが。
「無愛想だけど、行動に思いやりがこもってる所が良いの。何かあった時に俊敏に対処してくれるのも格好いいし。あとシンプルに見た目が良い」とのことだ。
「——飼育員間での情報共有は、自分が上に掛け合っておくので大丈夫です。後日、各人にメールで連絡が行くと思います。あとはそれぞれの飼育員の裁量ということで」
レイの話が終わった。アカギツネの言う通り彼の仕事は迅速かつ確実であるため、今回の連絡に関しても問題はないだろう。そもそも担当フレンズが大学教育プログラムの一年目に参加している時点で優秀なんだろうけど。
「アカギツネさんから何か意見はあります?」
「えっ⁈いや〜完璧なんじゃないですかね〜。レイの言う通りでいいと思います」
想い人が話すのをぼんやり眺めていたところに、話を振られて慌てたからといって、盲目的信者になるのはやめた方が、と思ったが多分言うだけ無駄だ。
その後は、一般の方向けの広報や、大学側とのスケジュール最終調整だとかを話し合った。当日に参加して、大学のヒトとして施設の解説をする役回りもあるので、結構責任重大である。
とりあえず会議はこれといった問題も生じず無事に終了した。少しカフェインが欲しい気分になってきたので、会議室を出て同じフロアの自動販売機へと向かう。微糖の缶コーヒーがあったので、買ってその場で開けて飲んでいたら、レイがやってきた。
「レイさん、お疲れ様です」
「ヨウさんこそ、お疲れ様っす」
自動販売機で無糖の缶コーヒーを買ったようだ。左手に缶を持ったまま、小銭の入った財布を入れたついでにポケットの中を右手で漁っている。そして少し顔をしかめてから尋ねてきた。
「すんません、喫煙所ってこの建物にありましたっけ?」
「え、ああ、一応ありますよ。確か一つ下のフロアに。良ければ案内しますよ」
「どうも」
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