第4話 学者と学舎

 キャンパスに入ってすぐ真正面にある大きなビルに入り、4階までエレベーターで昇った先の会議室。カコさんと向かい合って座っている。

「色々準備があるというのに、……ギリギリの時期にこちらに来てもらって、申し訳ないです」

「いえ、自分の都合もあったものですから、お構いなく。事務的な準備はあらかた向こうで済みましたしね。ただ、キャンパスの建物とか雰囲気とかは実際に見ないとわからないものですが」

「あとで、見学しましょう。……案内するので」

 早く見学に行きたいが、その前に仕事の話である。改めて授業システムやら年間計画やら授業以外に任される仕事やらの確認を済ませる。「普通」の大学ではないぶん、確認事項も色々と多い。


 新西之島市アニマルガール保護及び社会参加推進条例、通称「フレンズ保護法」によって、部分的ではあるものの、サンドスター環境下におけるアニマルガール、別名フレンズの人権が事実上認められて以降、ジャパリパーク内の様々な組織の体制が見直された。

 認められた権利の中には、日本国憲法における「学問の自由」や「教育を受ける権利」も当然含まれているため、「フレンズが勉強する為の大学がないのはおかしい」という意見が人間側からもフレンズ側からも出てきて、その結果、大急ぎで大学が作られたわけである。

 だからと言って、この大学はフレンズのためだけのものではない。人間にも門戸が開かれている。

 サンドスターやフレンズについての調査や研究は、世界広しといえどこの島でしかできない。そんな不思議を解明したい、あるいはジャパリパークに貢献したい、そういう未来ある学生のために、フレンズとは別枠で一般公募がかけられていた。もっとも、遊び半分で来られても困るので、試験は激ムズ、面接も厳しく、ワークショップか何かで人間性もきっちり問われるという噂である。

 実際、名門大学卒業の銘柄を蹴って中退してまで、私立ジャパリ学園大に来た人もいるという。教授陣には「その道の権威」的な人がうじゃうじゃいるので学問のレベルに支障はないだろうけれど。


「……それで、授業なんですが」

 カコさんが口を開いた。

「試験や面接を突破したとはいえ、……ヒトとフレンズでは、……思考パターンや理解度が違うことも多い……。一律に教える、というのは、あまり望ましくないです」

「わかります」

 大学一年生の時、一部の優秀な学生に合わせた授業ペースについて行けなくなったことがある身としては、非常に共感できる。フレンズに自分と同じ経験はしてほしくない。

「知識の吸収が速すぎるフレンズが沢山いるので……」

「そっちか〜」

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