第一章35 『共有と誘拐と○○と』
「さっさと報告して、ギルドで対策を立てるぞ」
「……うん」
王都が一部の魔王に依頼したのは
ギルドから俺に与えられた情報はこうだ――元々はギルド管理局が討伐する予定だった
(まぁ、貰った情報が少なすぎて、この話も何処までが本当か分からないけどな)
扉を開け、ギルドに飛び込む。
「何だ?」
もうすぐ日も傾きそうなのに、やけに人が多い。昨日も一昨日もこの時間、というか他の時間にもそんなに人を見なかったにも関わらずだ。
理由は詳しく聞いてないが、魔王の数が足りてないらしい――当たり前だが、解決してくれる人がいないなら、わざわざギルドまで依頼を頼みには来ないだろう。
(それでも来る必要がある程、相当な事があったか……?)
「……わたし……外で……待つね」
「おぉ、分かった。また対策を練る時に呼ぶからゆっくりしてろ」
「……うん!」
人混みが苦手なフェイは外に出ていく。依頼書とライブラリの間にある机やイスには空席がない程、沢山の人が集まっていた。普段なら俺も踵を返す所だが、今回はそうも言ってられない。
「あっ! ガイにゃ!」
「ガイさん!」
ライブラリにいた二人がこちらに近寄ってくる。
「少年に猫か……あれ? 嬢ちゃんはいねーのか?」
「用事があるらしくて、私たちは留守番にゃ!」
「そうか。というかこの騒ぎは何だ?」
ギルドの中に入ってから、気になっていた事を聞く。
「町の中に魔物が出現したらしいにゃ」
「魔物が? 魔物避けがあるのにか?」
「それが町の外周にある魔物避けの街灯が何個も潰されてるらしいんです」
「街灯が……?」
「だから町の人が避難や、依頼をしに来てるにゃ」
「なるほどな」
イタズラにしてもタイミングが悪すぎる。
「まぁ、丁度いい。お前ら二人もついてきてくれ。聴いてほしい話がある」
「うん? 分かったにゃ」
「分かりました」
「そういや、フェイはどうしたにゃ?」
「今は外で待ってる。この人の多さだからな……」
「確かに、これだけギルドに人がいるのは初めて見たにゃ。これだけ人を見てるとお腹が空くにゃ!」
「何から連想した!? 人を見てお腹を空かすのはヤバすぎるだろ!」
「冗談にゃ」
舌をペロッと出す猫は無視しつつ、カウンターまで向かう。
「あっ、ガイさん」
「忙しい所すまない。ウィンはいるか?」
「ウィンさんなら奥に……」
「分かった。急ぎだから直接話にいっても?」
「はい! どうぞ」
「ありがとう。行くぞ」
「ここ初めて入るにゃ」
「何だかドキドキしますね」
そんな事を言う二人を連れて、カウンターの奥に向かう。
「出来ればお嬢ちゃんにも聴いて欲しかったんだがな…………っとウィン!」
「うん、ガイ? どうしたの?」
「話がある……」
「そうか……」
話を聴いたウィンは頭を抱えている。まぁ、ギルド管理局が探していた化け物がここにいたんだ。別の仕事で来ていたウィンからすれば、事の重大さを考えると、頭を抱えたくもなるだろう。
「その
「そうだね……凄くヤバイ」
青ざめた顔のウィンがそう言う。
「あれから、僕もギルド管理局本部に情報はないかと直接色々聞いてみたんだけど……」
「そんなに簡単には教えてくれないだろう?」
「少し伝手があってね。色々やる事を引き換えに情報を聞き出したんだ」
そこから、ウィンの話した内容はやはり全く知らされていない情報ばかりだった。
詳細はこうだ――
だが、実験の最中に逃げ出してしまい、手が付けられなくなったと判断した管理局は、手練れの魔王十人の討伐隊を編成、あと一歩の所まで追い詰めるが討伐隊は殆どが全滅、目標には逃げられる結果に終わってしまった。
そして、また逃げ出した
「聞かされてた話は嘘ばっかりじゃねぇか」
「僕も最初に知らされていた情報とは大きく違っていて驚いたよ」
何が討伐予定だ。最初から自分たちで捕まえていたにも関わらず逃がし、それを揉み消すのにも失敗。俺が聞かされていた情報は、結局自分たちが仕出かした事を都合良く見せる為の嘘しかなかった。
「でも、何で討伐じゃなく、探索依頼なんだ?」
どうせ嘘を教えるなら、依頼した魔王に直接倒させても問題はないだろう。わざわざ探索なんて回りくどい依頼をする理由が分からない。
「そこがヤバイ所なんだ……」
「どういう事だ?」
「ギルド管理局がしていたのは、魔力を生み出す力を増大させる実験だったらしい」
「何だと?」
「当初、実験は失敗したと思われていた。でも、万全を期す為に、逃がした後の討伐隊は手練れの魔王十人で行われる事になったんだ」
どれだけ自分達の失敗を揉み消すのに必死だったかがよく分かる。十人も魔王がいれば、そうそう倒せない魔物や魔ノ者はいない。
「でも、結果は」
「殆どが全滅か……」
「何とか生き残った者もかなりの重傷らしい」
ようやく分かった――ギルド管理局が討伐依頼を出さなかったのは、出しても無駄だと分かっていたからだ。これは個人で何とか出来るレベルを遥かに越えている。
「とりあえず僕はギルド管理局の本部にこの事を伝えてくる」
「あぁ、頼む!」
「じゃあ、俺たちは対策を立てるぞ」
「分かったにゃ」
「僕に何が手伝えるか分かりませんが、頑張ります!」
この人員で出来ることは限られるとは思うが、それでも応援が来るまでに出来ることは何かあるだろう。
(後はフェイも呼んで……ん?)
「あのー?」
全く見たこともない男が近付いてくる。
「これを渡せと……」
「なんにゃ?」
どうやら猫に用があるらしい。前足を器用に使って渡された紙を開いている。
「…………………………」
「ライさん?」
「どうしたんだ?」
「これは何だ……」
今までの口調とは違う、怒気を含んだ声だった。
「誰から渡された……」
「ちょ、ライさん!」
「落ち着け!」
紙を渡した男に飛びかかる勢いの猫を宥めて、俺も紙を確認する。
その手紙には嬢ちゃんとフェイ、二人を
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