第一章15 『ギルドと情報と○○と』
両開きの大きなドアを開けギルドに入る。大樹の中と聞いてどんなものかと思っていたが、中は普通の建物と変わらないようだ。どうやら大樹の一階に辺る部分がギルドになっており、上の階層は別の施設になっているらしい。
「中は思ったより普通ね」
「ほんとにゃ」
「確かにそうですね」
ギルドの奥には受け付け用のカウンターがずらりと並んでおり、中ではバタバタとギルドの人間が忙しそうに仕事をしている。パッと見た感じ、半分が魔王向けの依頼受注カウンターで、もう半分は住民向けの依頼要請用だろう。
「私達の目的に合いそうなのは……っと」
ギルドを見渡す。入って右側の壁、というか木には依頼が書かれた紙がびっちり隙間なく貼られており、カウンターの向こうで慌ただしくしている理由がよく分かる。
「あっちね!」
依頼書の反対側には、地域ごとに発行されてる新聞や、噂、起きた事を纏めた書類など、単純にこの場所を動き回る為や、依頼を受ける上で必要な情報が纏められたライブラリがあった。
「ご飯はないにゃ?」
「どれだけお腹減ってるのよ!?」
依頼書とライブラリの間にある待ち合わせや、順番待ちに使われる大量の椅子や机を避けて歩きながら、目的の場所まで向かう。
「これは凄い量ですね……」
「基本はこの地域のが多いけど、他の場所の情報も集められてるからね。これとかも!」
手元にあった新聞を渡す。今朝に少し見た王都の物だ。
「うわっ! 字がいっぱいです!」
ついでに私も確認する。決して、新聞を見てるエン君にぴったりくっつきたい訳じゃない!断じて違う!
「ドロシー何か鼻息荒いにゃ……」
「そ、そ、そんな事ないわよ!」
王都で結成された討伐隊、砂漠の町サハラの
「まぁ、これは関係ないでしょうし、願いを叶える滴について調べましょうか」
「はい!」
新聞を畳んで元の場所に戻しながら、仕切り直す。
「じゃあ、ライはカウンターで滴について聴いてきて」
「にゃ!?」
「その姿じゃ、調べものに向かないでしょ?」
「そ、そんな事ないにゃ! バッチリ調べられるにゃ!」
そう言いながら、猫の前足でサムズアップを決めてくる。
「いや、どんだけ器用なの!? どちらにしても、手分けした方が早いしお願い」
「えーっ、めんどくさいにゃ……」
「それが本音かっ!」
既に椅子の上で横になり始めているライ。この猫!
「聴いてきてくれたら、さっき買ったハニーアップルあげるから」
「行ってくるにゃ!!!」
「チョロ過ぎる……」
言うが早いか、カウンターに走っていくうちの猫のチョロさを心配しながら、私とエン君も調べものを続ける。
「中々、見付からないですね」
調べ始めてから、一時間が経った。まだ資料に目を落としながらそう言うエン君を、ちらっと見る。
(やっぱり可愛い! この世に舞い降りた天使かな?)
そこである事に気付く。エン君は資料を見ながら、必要になるかも知れない情報を小まめにメモしていた。
「これと……これと、これ……」
それ自体はおかしくないが、生活とは切っても切れない関係にある魔法を、知らない環境で育った子が、読み書きは難なくやっている事に違和感があった。彼が今読んでいる資料は、年上の私ですら頭を抱えそうな文章量だ。
「エン君ってもしかして……」
「はい? なんですか?」
「天使?」
「何言ってるんですか……」
そう言いながら、少し顔を赤らめるエン君に胸を打たれつつ、本来言おうとした事を心の中で続ける。
魔法を知らないじゃなく、意図的に魔法を
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