第一章14 『魔人と魔王と○○と』
黒ずくめの集団による襲撃から十数分後、私たちは西入り口の道を通り、ギルドの前まで来ていた。あの後少し辺りを探してみたが、結局気絶していたはずの二人も見つけられず、エン君が止めたナイフや私の頬の傷がなければ、幻覚でも見たと疑う所だ。
「これがギルドですか!」
「大きいにゃ~」
ギルドを見上げながら、猫の姿に戻ったライとエン君が呟く。フォレストの中心、町の中なら何処でも見える大樹マザーにギルドはあった。パンフレットによれば、悪しき者を退けるらしいが、本当に効果はあるのだろうか?
「ねぇ、ライ」
「どうしたにゃ」
「何か、気分悪かったりしない?」
「特にはないけど、それがなんにゃ」
「いや、パンフレットに悪しき者を退けるって書いてあるから……」
「ドロシーの中で私はどんな評価にゃ!」
「えっ……食欲の化身?」
「誰が食欲の化身にゃ! というかそうだとしても、それで悪しき者認定は厳しすぎるにゃ!」
「まぁ、確かにそうね」
何を以て悪しき者かは分からないが、ここまで来れてるなら、私達はそこには入らないのだろう。
「今更ですが、ギルドって何なんですか?」
物珍しそうに大樹を見ていたエンが聞いてくる。そういえばまだ説明していなかった。
「私達人間は、魔ノ者と契約する事で魔法が使えるようになる所までは説明したわよね?」
「はい!」
「人でありながら魔ノ者の力を借り、魔法を行使する存在――人はそれを魔人と呼んだの」
「なるほど」
「今じゃ多くの人が魔人ではあるんだけど、その中でも、国が行う試験に合格した者は、国が正式に認めた魔人である魔王になれるのよ」
「魔人とはどう違うんですか?」
「もう魔法と生活は切っても切れない関係だから、魔王になれば治安維持や、国や個人の依頼などを解決したりして報酬を貰えるようになるの」
「それはいいですね!」
「とは言っても、殆ど何でも屋みたいなもんだけどにゃ」
そう苦笑しながらライが付け足す。
「で、治安維持の目的と、依頼の受注が出来るように各地域に建てられたのがこのギルドってわけ」
「じゃあ魔王じゃないとここには入れないんじゃ?」
「そんな事はないわ。住民が直接依頼しに来る場合もあるし、それに……」
胸元から赤い魔法石が嵌め込まれたペンダントを取り出す。
「私が魔王だから」
「えっ!?」
「魔王に認められた一人一人に渡されるのがこのペンダントなの。これに魔力を込めると、その人物の名前などの情報や、顔が表示される特別仕様なのよ」
「ドロシーお姉ちゃん凄すぎます!」
「もっとお姉ちゃんって呼んで!」
「その発言のせいで、全く締まらないにゃ…」
ペンダントを仕舞い、話を続ける。
「それに、ギルドは国の中枢だから情報も集まりやすいからね」
「ここなら願いを叶える滴についても?」
「きっと何かしらの話は聞けると思うよ」
「それじゃ、お腹も空いたしさっさといくにゃ!」
「さっきあれだけ食べたよね? あれ? 夢かな?」
つかつかと入っていくライを追いかけながら、私とエン君もフォレストのギルドの扉をくぐる。
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