第4話 ◇地獄リスト
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◇地獄リスト
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■転生先と転生条件、および大往生報酬。
【1】地獄の様な地獄
転生年齢:0歳
転生先:人間
転生条件:不死を付加。自動成長を付加。痛覚以外の全ての五感を無効化。
設定寿命:100歳
大往生報酬:神への列席 or 願望の成就。
内容:
生まれたその日から地獄のありとあらゆる責苦を受けます。
寿命が来るまで自ら死ぬことも出来ません。また、痛覚以外の五感を全て遮断するので痛み以外のなにも感じることはありません。
ただし、体は勝手に成長します。
針山、溶岩風呂、ブラックホールによる無限の圧縮など、
自己再生と破壊を100年間ひたすら受けます。
しかし、もしその苦行に耐えることが出来たら、神への昇神、
もしくは、望むものの願いを叶えることが出来ます。
ハイリスク、ハイリターンな転生です。
【2】地獄の様な天国
転生年齢:5歳
転生先:天使
転生条件:不老不死を付加。以後の転生の禁止。
設定寿命:なし
大往生報酬:なし
内容:
天使として神に仕えていただきます。
また、もし一度これに転生をすると2度と他のものに転生することは出来ません。
安定した暮らしは保証されますが、神への愛によってのみ永遠に生きることになります。
【3】地獄の様な現実
転生年齢:0歳
転生先:人間
転生条件:就業先の固定。
設定寿命:62~120歳(任意)
大往生報酬:煉獄リストによる転生が可能。
内容:
これまでと同じく地球に転生します。人間の誰のもとに生まれるかはランダムです。しかし、どの国、どの家庭に生まれようと、運命的にブラック企業にしか就業できない宿命を背負うことになります。
寿命は任意に設定できますが、最低でも62歳以上120歳以下を選択することになります。もし、途中でなんらかのアクシデントが発生して寿命を全うできないと、再度やり直しです。
ひたすら社畜として働くことになりますが、地獄の責め苦としては軽微な為、報酬も軽いものになります。大往生報酬の「煉獄リスト」では「地獄リスト」より少し条件が良い転生が選択できるようになります。
安定を好むローリスク、ローリタン向けの人の転生です。
【4】地獄の様な異世界
転生年齢:0歳
転生先:人間
転生条件:特殊能力の付加(別リストから2つ選択)、バッドステータスの付加、大往生条件として大魔王の討伐を付加。
設定寿命:80~110歳(任意)
大往生報酬:幸福リストによる転生が可能。
内容:
地球ではなく、魔法が存在する異世界への転生になります。大往生条件として寿命を迎えることだけではなく、大魔王の討伐も条件として課されます。
寿命は任意に設定できますが、最低でも80歳以上110歳以下を選択することになります。
他の転生と違い選択式の特殊能力を得ることが出来ますが、バッドステータスも付いてきます。何のステータスが付くかはランダムです。
もし、途中でなんらかのアクシデントが発生して寿命を全うとできない、
あるいは大魔王の討伐が出来ない場合は再度やり直しです。
大魔王討伐という大往生条件が大変厳しい分、報酬は「幸福リスト」による転生という【3】より格段に良いものになります。
【5】地獄の様な異世界2
転生年齢:0歳
転生先:スライム
転生条件:捕食者の能力の付加
設定寿命:50歳以上(任意)
大往生報酬:スライムとしての昇神
内容:
【4】と同じく地球ではなく、魔法が存在する異世界への転生になります。しかし、転生の際には人間をやめていただくことになります。
ただし、転生後のスライムは”捕食者”という相手の能力を奪える力を持つので、
力を奪っていけば無双することが可能です。
大往生後はあくまでスライムとしてですが神になることが出来ます。スライムであることさえ許容できるのならば破格の転生になります。
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なにこれ……?
それがこのリストを見たそのままの印象だった。まさに、「なにこれ」状態である。ハッキリ言ってまともな転生が1つもない。さすがに訊かずにはいられなかったので、目の前でふんぞり返っている男に詰め寄った。
「なんで全部転生先が【地獄のような】という枕詞が付いているの……?異常としか思えないだけど!?」
男はやれやれという感じでこちらに向き直った。
「選択肢があるだけありがたいと思え。本来であれば、私が決めても良かったのだがな」
「ちょ……それってあなたに有無を言わさず地獄に落とされる可能性も合ったって事?」
「そうだ。だが、情状酌量の余地があるといっただろう?選択肢くらいはあたえてやるさ」
その言葉を聞いて私は戦慄を覚えた。神と言うのはやはり伊達ではなかった。
なんて恐ろしい裁量権があるのよ!!
【1】とか恐ろしい地獄だ。たとえ何回死んだとしても【1】を選択することはあり得ない。大往生報酬とやらは神になれるとあるが、目の前の男の様な存在になったとしても幸せになれるとは到底思えなかった。
男はさらに言葉をつづけた。
「神の法でな。寿命を全うできなかったものはこの地獄リストから選ぶことになる。例外がないわけではないがね」
「例外?」
「神の信仰に大いなる貢献をしたものだ。」
「あ……私は関係ないですね・・はい」
私はガクッと項垂れた。あまりにも理不尽だった。確かに一気飲みはしたんだろうけど、自分で死のうと思ってやった訳ではないはずだ。どちらかというと不慮の事故と言うほうが正しい。
これも一応寿命を全うできなかったことになるんだろうか?なるんでしょうね……はぁ
今日何度ため息をついたか分からない。こんな事になるんだったら恋愛して人生をもっと謳歌していればよかったと思う。
私まだなにも女らしいことしてないのに……あんまりよ……こんなの……
さすがに泣きそうになった。
「……まあ、まて。まだ話は終わってない」
心を読んだんだろう。さすがに相手も気をまずくしたのか、フォローを入れてきた。
「寿命を全うできない理由は人それぞれある。よほど極悪な犯罪を犯さない限り、大体は情状酌量の余地が付く理由たりえる」
「そして、情状酌量の余地が付いた人間には、もう一つ、有利な条件を得ることが出来る」
私はそれを聞いて顔を上げた。
選択肢を与えてくれるだけではなかったの?
「もう一つの有利な条件とは転生前の姿・記憶・年齢をそのまま転生先でも使えるという事だ」
それを聞いて私はハッとした!
年齢をそのまま転生先でも使えるという事は、その分賦役は0歳から始めるより少なくなる。転生前の段階で既に老人で、寿命前に不慮の事故かなんかで亡くなった人は【3】なんてあっという間に大往生条件を満たすだろう。
確かにこれは悪くない。【2】以外に関しては年齢が大往生条件に絡んでくるんだから年齢を引き継げるのは最高のアドバンテージだ。
「もっともこれを使うかどうかは転生者の自由だがな。きれいさっぱりに前世を忘れて0からやり直したいという奴ももちろんいる」
「ちなみに年齢を引き継げるのは60歳までだ。それ以上の年齢で寿命を満たさず死んだ者は60歳からやり直すことになる。まあ、お前には関係ないことだが」
「また、【2】【5】に転生する場合には、転生前の姿は引き継げない。引き継げるのは記憶と年齢のみだけになる」
つまり、50歳以上で寿命を満たさず死んだ者は【5】に転生すればすぐにスライムの神になれるわけね。私はお断りだけど。
「これで、話すことは全部だ。そろそろ決めてもらえないかな?条件としてはいささか楽になったと思うが?」
「そうね……」
私はそう言って頷いた。意外に根は優しい奴なのかもしれない。先ほどより少し元気を取り戻したおかげもあり、リストを再度見る余裕も出た。
どれが果たして一番いいか……
普通に考えたら【3】でしょう。重労働の運命を背負わされているとは言え、同じ地球だし年齢や記憶・姿も引き継げる。私は今18歳だから62歳まで最低44年間我慢すればこれよりマシな条件の転生リストを得ることが出来る。でもね……44年間か……私が生まれてきてからの年齢を後2倍強も経験しなきゃいけない。楽な人生なら問題ないだろうけど、奴隷を44年間やるのは相当な覚悟が必要だ。
はぁ……頭痛くなってきた……
ご年配の方には甘ったれるなと言われるかも知れないけど、先が既に重労働が約束されているなんて頭を覆いたくなる。
楽しいことがあればいいんだけどね……
人生山あり谷ありという。確かに谷は大変だけど、山があれば頑張れる力になれる。でも、私の場合これは谷しかない気がする。正直かなり厳しい……ていうか、もし今回のような不慮の事故なんかで命を落とした場合再度奴隷をやり直し……?
怖すぎる……
【1】は論外中の論外。大往生報酬として願いが叶うのは良いが、永劫にも等しい苦痛を与え続けられるのは想像を絶する怖さだ。
【2】は良さそうに見えて永遠に神に縛られるという事になる。私は自由でいたいからこれも無理ね。
【5】もそうだ。スライムはある意味面白そうだけど、【なんとなく】やめておいたほうが良い気がする。
踏み入れちゃいけない領域な気がする。理由は良くわかんないけどね。なんとなくよ。
そうなると、最初から【3】か【4】しかないじゃない。
【4】を見てみる。
転生条件にバッドステータスがランダムに付く。また、大往生条件として寿命以外に大魔王討伐が付く。大魔王と言うのが良く分からないけど、条件としては一番良いんじゃないかしら?少なくとも一番自由がある。特殊能力も選択で2つ覚えられる。
これに限って言えばやり直しが強制されていても実はプラスだ。大魔王をたとえ倒せなかったとしても次のやり直しで、倒せる可能性がある。倒せなきゃ永遠にループをする可能性もあるけど。自由度が高いから何とでもなるだろう。異世界というのも興味があるし。
こういうのを見るとなんかオンラインゲームを想像しちゃう。私自身はやらないけど、友達で好きな人がいて私にそういう情報を話してくれる人がいた。その為、ある程度こういう異世界系は脳内補完が出来る。
…………
うん。決めた!
私はリストから顔を上げて、男を見た。
「決まったかな?」
「【4】で行くわ。だけど、聞きたいことがある」
「なんだね?」
男が聞き返してきたので、私はそのまま質問をした。
「転生条件について詳しく知りたいのよ」
「選択できる特殊能力の事、大魔王の正体の事、バッドステータスは何が付くか。とかね」
男はそれを聞いてちょっと考えた後回答した。
「よかろう。選択できる特殊能力についてはリストを渡そう、その中から2つ選ぶがいい」
男はそう言って虚空から巻物を出して私に渡してきた。
巻物?
私はすぐにそのリストを確認した。巻物である理由はすぐに分かった。
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