第2話

「ようこそいらっしゃいました。

勇者様」


美しいドレスに身を包んだ、16歳くらいの美少女・セレスティア=アルディフォースが可憐に微笑みかけた。

セレスティアは、白い肌で青い目をしている。まるで妖精のような容姿だった。

壁際にはずらっと、鎧で全身覆われた人たちが立っている。

セレスティアの少し後ろには、スーツのような服を来たおじさんが、横一列に並んでいた。

そして、その後ろ、少し高い位置に、The 王座って感じの椅子があり、王冠を被った人が腰掛けている。

コスプレしている人でなければ、王様だろう。


「今回の勇者は女性か」


「見目も麗しい」


一列にならんだおじさんたちが、ボソボソ囁きあう。


「俺は見えてへんみたいやなぁ。

こういうファンタジーが起きるんやったら、できれば、生きてる内にお願いしたかったなぁ」


青年幽霊がぼやく。


「どういうこと?」


可憐は辺りを見回しながら、思わず口に出した。


「混乱しているのも無理はない。

突然呼び出したわけだからな」


王座から声が聞こえた瞬間、ざわめきが一瞬で消えた。


「さて、勇者よ。

お前の名を聞かせてくれ」


アルディフォース王・ジョルディアス=アルディフォースが、可憐に声をかけた。


「ごめんなさい、先に状況の説明をお願いします」


「不敬だぞ。

陛下の質問に答えんか‼︎」


横一列に並んだおじさんの1人が怒鳴りつけた。


「よい」

「しかし、陛下」

「私がよいと言っているのだ。

少し黙れ」

「申し訳ありません」


王様と忠臣の話し合いを、青年幽霊がじとっとした目で見ている。


「茶番やん。

呼び出しといて、コント始めやがったなぁ、おっさん達」


青年幽霊がチャチャを入れても、可憐以外には聞こえない。


「さて、勇者よ。

お前を呼び出した理由から話すとしよう。

それでどうしても納得がいかなければ、この首を好きにするが良い。

だからまずは、私の話を聞いてほしい」


「わかりました」


可憐が頷く。


「キリキリ吐けや」


王様の隣で、青年幽霊は凄む。

もちろん、冗談だ。

もし聞こえていたら、腰を低くして、王様を持ち上げる発言をしていただろう。

その証拠に、可憐以外の全ての人に見えていないことを、おかしな踊りで確かめてから、ふざけたことをしだしたからだ。


「この国の西にある、逢魔という国がある。

その国が魔王と呼ばれる者に占拠され、支配されてしまった。

その魔王は凄まじい魔力で、好き勝手に振る舞い、しまいにはこの国に手を伸ばし始めたのだ。

その魔王は、異世界から来た者であり、正直、この世界の人間の手には余る。

だから、魔王が来た世界と同じ世界から、善良な者を呼び出し、一緒に帰ってもらいたいのだよ」


「善良?

薙刀振り回す、暴力美少女やで。

明らかに間違っとるやん」


桜が他の人に気づかれないように睨むという、器用なことをした。

しかし、青年幽霊は気にしていない。


「その魔王が現れた、原因を聞かせてください」


「突然現れたのだ。

原因など分かるわけもない」


「俺たちみたいに、拉致ったんちゃう?

俺の働いてたんとこの社長と、すっごく似とるもん、このおっさん」

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幽霊&&勇者 青桐 @Kirikirigirigiri

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