第9話 逃亡

前回のあらすじ

『弱肉強食』弱いものが肉になり、強いものがそれを食う。それを知ったユイは一度はくじけたものの、自力で自分を取り戻した。それから狩人たちから逃げることになった。



ユイはキツネと一緒に走り、すぐに木の茂みに隠れた。二人とも息を切らしている。

「ユイちゃん大丈夫…?」

「…うん」

キツネはユイを心配している。

(ピピピピッ!ピピピピッ!)

ストップウォッチの音がした。意外とでかい音だった。

「時間切れだ。どこだーどこにいる!」

(え!?結構走ったはずなのに声がまだ近い…)

20秒しか走ってないので遠くても70メートルくらいである。ユイは体を縮めて震えている。

「キツネさん…このままじゃすぐに捕まっちゃう…」

「うん…」

キツネとユイは汗だくだった。キツネは茂みに背を押し付けて険しい顔をしている。おそらくこの時、キツネはどうやって逃げるか考えたのであろう。

そしてしばらくして…キツネさんは思い切ったことを言った。

「よし、一緒に逃げよう!全速力で!」

「…!?」

「一人は怖いけど二人ならなにも怖くないよ。ユイちゃん、準備はいい?」

「…うん!行こう!」

と言って二人とも一緒に走った。今度は時間制限のない未来の見えない走りである。

(今誰か走ったぞ!)

狩人の声が聞こえる。ユイとキツネは一生懸命に走った。二人とも見失わないように、全速力で走った。しかし、

「うわ!」

突然、ユイが倒れた。疲れてしまって足を引っ掛けてしまった。

「大丈夫!?」

「…うん、大丈夫!」

(いたぞー!あいつらこっちに逃げてやがる!)

「まずい!」

狩人にバレてしまった。

「立てる?」

「うん…行こう!私はまだ走れるよ!」

「…うん、一緒に行こう!」

ユイはすぐに立ち、また同じ方向へ走って行った。その時、

(バンッバンッ)

「!?」

「!?」

突然銃声が鳴り始めた。銃声は何回も聞こえる。

「ユイちゃん!気をつけて!」

「う…うん!」

銃声がなってもユイたちは、走るその足を止めない。とにかくまっすぐ、出来るだけ遠くに逃げようと必死に走る。


またしばらく走った。銃声の音はいつのまにか聞こえなくなった。ユイは後ろを向いて確認した。…人影は見えない。

「キツネさん!もうあの人たち見えないよ!」

ユイは息切れしながら言った。と、そのとき!

「危ない!ユイちゃん!」

「え?」

ユイは後ろを見ながら走っていた。そのためユイは正面を見ていなかった。しかしもう手遅れだった。それはもうユイのすぐ目の前だ。


それは…“崖”だった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る