第3話 遊ぶ
前回のあらすじ
ユイは喋る子ギツネという初めての友達ができた。怪我した足を治すためユイは家の中で安静にした。
あれから3日が経った。ユイの右足のひざの傷はかさぶたになっており、もう触っても痛みを感じなかった。
「やった!怪我が治った!」
完治ではないがすごく大きく頑丈なかさぶたができてるので大丈夫だろうとユイは思った。でもキツネさんにこのケガを見せるのは…と思ったユイは新しい包帯をまた上から巻いた。
「お母さんお散歩行ってくる!」
「ユイ、怪我は大丈夫?」
「うん。もう痛くない、大丈夫!」
「気をつけていくのよ」
「はーい」
ユイは扉を開ける。今日もまた外が明るい。でもやっぱり雪は積もったままである。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
ユイは外へ飛び出して行った。
「あれ、でもどこに行けばいいんだろう?」
ユイは考えた。あの時キツネさんはどこにきて欲しかったのか。
「あ、私が怪我したところにいるかな?」
ユイが怪我したところ。そこはキツネと出会った場所でもある。森の中にある空き地のような場所である。
「あそこに行ってみよう」
ユイは歩いて向かった。
そして数分後、ユイは目指していた場所についた。しかし、キツネのすがたは見えない。
「キツネさーん!どこにいるのー?」
ユイはキツネさんを呼ぶ。その声は森全体に広がった。
「ここにいるよ!」
「あ、キツネさん!」
キツネはちょっと大きな木の茂みからひょこっと出てきた。
「そんなに大声出さなくても僕はここにいるよ」
「はぁ…よかった!忘れられたかと思ったよ」
「やくそくしたでしょ?僕は忘れないよ」
「エヘヘ…」
ユイもキツネもにっこり笑った。
「あ、そういえば怪我大丈夫?包帯まだやってるみたいだけど…」
「これはウソの包帯。本当は大きなかさぶたになっててもう痛み感じないんだ。だから心配しなくていいよ!」
キツネさんは心配そうに包帯を見ている。
「うーん、まあ大丈夫みたいだし。じゃあ遊ぼっか!」
「うん!何して遊ぶ?」
「そうだね…かくれんぼしよう!」
「おお!いいよー。私かくれんぼ初めてなんだよね」
「じゃあどっちが先に隠れるかじゃんけんしよう!」
「よし、私が先に隠れるぞー!」
「いくよー最初はグー!」
「じゃんけんポン!」
それからユイとキツネはたくさん遊んだ。いっぱい遊んだ。いろいろ遊んだ。かけっこ、雪合戦、雪だるま作り、追いかけっこ、たくさん遊んで、たくさん学んだ。ユイはキツネにあって沢山のことを気づかされた。友達の大切さ。友達という楽しさ。喧嘩をしたこともあったけど、すぐに仲直りになった。
「あはは!キツネさん!また一緒に遊ぼうね」
と、そうやってすぐにまた明日遊ぶ。そんな日々がもう10日間はやっているだろう。
しかしそんなユイを心配している人が二人いる。
「ただいまー!」
(ベシン!)
「…!?え…」
ユイはいきなりほっぺを叩かれた。叩いた人はお父さんだった。
「ユイ!なんど言ったらわかるんだ!早く帰って来いと!今日も遅かったじゃないか!心配したぞ!」
「あなたやめて!そんなに攻める必要ないじゃない!もっと優しく言って!」
「ユイにはもう3日前から言っているんだ!いま外には危険な動物が森に乱入しているとこっちで会議してることにも気にせず!親が子を心配する気持ちを少しはわかってもらう必要があるんだ!子供なんて人の気持ちはこうするしかわからないんだよ!」
「あなた!!!」
ユイはお父さんが怖かった。体の震えが止まらなかった。
そう、ユイはキツネさんと会って帰るのが遅くなっていたのだ。いつもは4時くらいに帰ってくるがキツネさんに会って夜の6時、8時とどんどん遅くなったのだ。キツネと昼寝して真夜中まで外に出ていたことがあった。
「ごめんなさい…」
「謝って許されるものじゃないからな!」
「だからあなた!!!」
「いいかユイよく聞け。お父さんは明日危険な動物と戦うんだ。そこにお前が巻き込まれたら大変だ。だから明日からお父さんが帰ってくるまで家から出るのは禁止だ!いいな!」
「…!?」
ユイはすごい驚いた顔で固まった。キツネとユイはまた約束をしていた。このままだと約束を破ってしまう。しかし、ユイはキツネのことを一切口にすることなく、素直に家出禁止を受け入れた。
ユイは部屋に戻り、泣きわめた。すごい泣き声だった。まるで誰かが絶望したかのように…。その声はリビングにも聞こえていた。
「ちょっとあなた、やっぱりやりすぎなんじゃない?」
「これぐらいやらないとあの子は聞いてくれないんだ。仕方ない」
ユイは今日お父さんに怒られてから部屋から出ることはなく、夕食もせず一夜を過ごした。
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