第2話 子ギツネ

前回のあらすじ

怪我してしまったユイはキツネと出会って…。



「今…喋った…?」

「あ、ごめんね。いきなり舐めちゃって…よいしょっ」

「!?」

キツネは人間のように喋り、人間のように四足から二足に立った。ユイはあまりの驚きに固まる。

「いろいろびっくりさせちゃったね」

「あ、うん…いいよ!ありがとう!」

ユイはまだ驚きを隠せないままだが、とりあえずお礼をキツネに言った。

「いやいや、どうってことないよ。それより、早く家に帰って手当した方がいいよ」

「あ、そうだね…ゔっ!」

ユイが立ち上がろうとすると右足の傷口からものすごい激痛が走る。

「!?…だいじょいぶ?」

「いたた…立てない」

「じゃあ僕が君の家まで送っていくよ」

「え?本当?」

「うん、肩組んで行こう」

「ありがとう!」

キツネさんはユイの右手を肩にかけ、ユイを立ち上げて少しずつ歩き進んで言った。

「君の家はどっち?」

「あっちだよ」

「うむ…」

ユイは空いた左手で自分の家の方向をキツネに知らせる。ユイは右足を引きずったままゆっくり進んでいく。

「ねぇ、君名前なんていうの?」

「あ、私はユイっていうの」

「ユイちゃんね、可愛い名前だね。よろしくね、ユイちゃん!」

「よ、よろしく…(照れている)」

ユイの顔は少しだけ濃ゆいピンク色になった。


「あ、あの赤い家かな?」

「うん、あれが私の家。ありがとうキツネさん。もう一人で行ける」

「うん。気をつけてね」

キツネはユイの右手を肩から離した。

「ねえユイちゃん。君の友達になっても…いい?」

「え、トモダチ?」

「うん、友達!」

ユイは戸惑った。今まで友達なんていなく、一人で何事もなく遊んでいた。ユイは自分が友達がいないことを今初めて知った。

「…うん!友達になろう!」

ユイはとても嬉しかった。


「ユイちゃん!ちゃんと怪我を治すんだよー!」

「うん。わかったー!ケガが治ったらいっしょに遊ぼうー!やくそくだよー!」

「うん。わかった!あ、あと僕のことは絶対に誰にも言わないでね!」

「うん!二人だけの秘密ね!」

そう約束事をするとユイは赤い家に入っていった。

ユイは家に帰るとすぐ自分で手当をした。薬を塗り足に包帯を巻いて安静にしていた。

「はぁ…早くケガを治してキツネさんと遊びたいな」

ユイはキツネとの約束が忘れられなくてワクワクが止まらなかった。

「ユイー!ご飯だよー!」

「はーい!」

ユイは自分の部屋からリビングへ移動した。

「あらユイ、その怪我どうしたの?」

「あ、えっとね…チョウチョ追っかけてたらこけちゃった。でも心配しないで。自分で治したんだ」

「まあ偉いわね。でもちゃんとそういうのはお母さんに言うんだよ。私もあなたに何かあったら心配なの」

「ごめんなさい…」

「まあ、大した怪我じゃないなら良かったわ」

(ふぅ…)

ユイはうっかりキツネさんのことを言おうとしていた。ユイは秘密を今まで持っていなかった。お母さんに隠し事をしたことがなかったため、ユイは言ってしまうところだった。

(あれはキツネさんとの秘密なんだ…言っちゃダメだ)

と自分で言い聞かせた。

しばらくテーブルでお母さんとご飯を食べていると、お父さんもやってきた。

「遅くなってすまんな。おい、ユイその怪我どうしたんだ?」

「外で遊んでたら怪我したんだって」

「え!?誰にやられたんだ!」

「お父さん違うよ。ただチョウチョ追いかけてこけただけだよ」

「なんだ…よかった…」

お父さんは心配症である。ユイのことをいつも心配してる。

「あ、そうだ。みんなに大事な話があるんだ」

「…?どうしたの?」

「近いうちに一週間くらい家に帰れなくなるかもしれん」

「え?どう言うこと?」

「最近忙しくなってな、色々面倒なことになってて、向こう側が人手足りてないらしいんだ。すまないがユイを頼んでくれるか?」

「いいわ。でも…」

「食料だろ。そろそろ切れる頃だと思っていた。俺が行く前にちゃんと調達してくる」

「わかったわ。よろしくねあなた」

お父さんは働いて僕たちのための家計を作り上げてくれている。ユイはお父さんが何をしているのかわからない。しかしユイはお父さんは頑張って働いているんだと思っている。


ご飯を食べ終わるとユイはすぐに自分の部屋に入って寝る準備をした。ベットに寝転がり、ふわふわな毛布を上から被り、少し大きい枕に頭を押し付ける。

「怪我が治ったら、キツネさんといっしょに何をして遊ぼうかな…」

ユイは寝落ちるまでずっと考えていた。キツネさんと何して遊ぼうかな…と。

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