ユイと子ギツネ(一期)

キオギツネ

第1話 出会い

ここは地球のどこか寒い場所。ある季節では雪が降り積もり、ある季節では雪は降らず、だが雪は溶けず、毎日雪の地面である。そこは、細く高い木がどこそこに生えていて、動物たちがたくさんいる森の中。そこにポツンとある赤いレンガの大きな家。そこには人間の家族、大人二人と子供一人のユイ一家が住んでいた。しかし、今、家にいるのは大人二人だけ。子供一人はどこに行ったのでしょう…。



「わーい夏だー!」

可愛らしい声が聞こえる。その声の主は小さな女の子。その子は赤いレンガの家の子供。名前は「ユイ」と言う。ユイは一人で森の中を散歩している。

「はぁ…夏でもやっぱりそこまで寒さは変わらないな」

季節はあってもさほど変化がない場所。でもそれはユイも慣れていたことである。

「でも…少しは暖かくなっていいんじゃないかな」

しかしユイは少しいつもより肌寒く感じているようだ。

「なんでだろう…なんか静か…だな…動物さーん!だれかいないのー!」

ユイの声が森の中に大きく響く。

「ギェーー!!!」

「うわぁ!」

いきなり女の子の前から大きなトナカイが鳴いて飛んできた。

「うわゎ…びっくりした…ん?トナカイさん。そこ、ケガしてる」

飛んできたトナカイの角は片方だけ酷く折れていた。そこから少し血が滴り落ちている。トナカイはユイを見つめる。ユイもトナカイを見つめる。

「えっと…治してあげる!こっちに…あ…」

ユイがトナカイに手をさしのばすとトナカイは素早く走り去って行った。

「行っちゃった。なんでだろう…前は全然さわれてたのに」

ユイは春の間、両親に外に出るなと言われて春の間はそとに出ていなかった。その前、ユイは動物とよく触れ合っていたのだ。それがいざ外に出たとなると動物と触れ合うことが少なくなってユイに近づく動物も少なくなっていた。それはユイが一番感づいていた。でもユイはそれをあまり気にしなかった。

「あ、綺麗なチョウチョ!待て待てー!」

ユイはチョウチョを追いかける。チョウチョはすばしっこく早い。ユイはそれを捕まえようと追う。

チョウチョを追っていくと森の中の少し広い場所にきた。チョウチョはそこで急加速する。

「あ!もう待て待てー!」

ユイも本気で走る

「あっ!」

(ズドン!)

ユイは雪に埋もれていた岩に足を躓かせ転んでしまった。ユイは右足の膝に大きなケガを負った。

「ゔぅ…痛い…」

傷口には雪が少し被り、痛みがさらにしみる。その雪は血で少しずつピンク色になっていく。

「は…早く雪を…落とさないと…」

ユイは痛みを堪えて自力で立ち上がり、目の前にあった大きな岩に座り込んだ。

「ゔぅ…痛い…」

目から涙が少し滴る。痛みをこらえるがそれはなかなかの痛さである。ユイは傷口を見て止まっている。あまりの痛さにユイは体を動かせず、涙をこらえるのに必死だった。ユイの視界は涙でよく見えなくなっている。

そこに突然何かの影がユイの視界に見えた。なにかが歩いている音も聞こえる。

「ん?…え…」

ユイは目を必死にこらえてみる。そこにいたのは小さいキツネ。そのキツネは毛皮がとてもふわふわで体は黄色。少し大きい耳を持っていて尻尾ももふもふしていて大きい。キツネは尻尾を左右に振りながらこっちにゆっくりと忍び寄って来ている。

「キツネ…さん?」

キツネはユイの傷口を見た。するとキツネはユイの傷口を舐め始めた。すごい痛みがユイの全身を震えさせる。しかし、舐められ続けられているとだんだん痛みが引いてくる。

キツネはユイの傷口に乗っていた雪を全部舐め落とすと舐めるのをやめた。

「すごい、ありがとうキツネさん!」

ユイがお礼を言うと

「どういたしまして」

「え!?!?」

ユイは驚いた目で目の前にいるキツネを見た。ユイは口を小さく開けて固まっている。



それは、ユイの人生を大きく変える運命の出会いの瞬間だった。

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