第12話任務遂行
玄関の鍵は桃から借りた鍵で開錠し、そのまま階段を上がり桃の部屋まで行くおれ。もう何度も来たことがあるので慣れたものだ。
部屋のドアを開けると、指定通りベッドの上にジャージが脱ぎ散らかしてあった。
まったく、畳むくらいしとけよ。誰も入らないと思って油断してやがったな?
そしてジャージを手に取ったおれは、あることに気づく。
そういえば桃のやつ、あれだと下着も濡れてるんじゃないか?
しょうがないなー、気を利かせて下着も持って行ってやるか。てきとうにタンスを漁ればでてくるだろう。某国民的ゲームの勇者みたいだな、やれやれだぜ。
そしておれは、タンスの最下段から順に下着を探していく。すぐにタンスの一番上の段に、整頓された下着群を見つけた。なんでジャージは脱ぎ散らかして平然としているのに、下着の群れは色別に配置して、きれいに一枚一枚畳んで収納してあるんだよ……。そのこだわりは意味が分からない。
とりあえず、下着はてきとうに上下同じ色のを選べばいいよな。そして一通り目を通した後に選んだのは白色だった。別におれの趣味という訳じゃないので勘違いしないように。
よし、多少手間取ったが、これで後は下着とジャージを桃に届けてやれば任務完了だな。ああ腹減ったなあ。
そして、桃のジャージと下着を持って姫宮宅を後にしたおれは、そのまま脱衣所へと直行した。脱衣所と風呂場の間に、中が見えないように木製の仕切りが設えてあるので、脱衣所に入ることくらい何の問題も無い。そうじゃないと、うちはトイレに行くには、まず脱衣所を通らなければならないので、誰かが風呂に入っているとトイレに行けなくなる事態が発生してしまうのだ。
「おーい、桃―、ジャージと下着持ってきたから置いとくぞー」
「うん~、あいちゃんありがと~、って、え? 下着まで持ってきちゃったの~!?」
「はっ? 持ってきたが、何か問題でも?」
「きゃー! おにいちゃんがももちゃんのジャージだけではあきたらず、わざわざタンスをあさったあと、クンカクンカしたももちゃんのぱんつとブラジャーもってきてるよー!」
「おい向日葵変なこと言うなマジで! そんなことしてねえ!」
クンカクンカは断じてしてねえ! わざわざタンスを漁ったのは確かだけども。
……まったく、機転を利かせた結果が冤罪とか勘弁してくれよ。
「う、うん。分かってるよ~。あいちゃんはそんなことする人じゃないって~」
さすが桃、わかってる。
「えー? それじゃあつまんないよー。ももちゃんにしかられるおにいちゃんがみたかったのにー!」
よし、わかった、お前にはジュースぶっ掛け事件と合わせて、拳骨二発にしてやるから楽しみにしてろ。
「はいはいそれじゃあ、ラーメン作っといてやるから、あと二十分くらいで風呂あがれよ?」
「はーい」
「ありがと~、あいちゃん」
「ああ」
そう言っておれは、脱衣所を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます