第11話急いで撤去
「よ~し、あいちゃんはこれで数分の間は帰ってこないから、今のうちにやっておこうかな~」
わたしは今朝から少しだけ焦っていた。まあ周囲にはバレてないよね。……多分。
原因は朝ご飯の時の『ファイト一発激のびーる君』のくだりなんだけど。その時にわたしがうっかり口を滑らせてしまった。
あいちゃんは『ファイト一発激のびーる君』を購入したことを誰にも言ってないのに、わたしは『ネット通販で取り寄せてた怪しげなお薬も全然効果が無いみたいだし~』なんて言ってしまった。だから案の定怪しまれて、何故知っているのかと質問されちゃって、その時は『机の上に出しっ放しになってたからだよ~』と返したんだけど、そもそも机の上に出しっ放しになってたことなんて無いから、全然誤魔化せてない気がするよ。
ちなみに、なんで『ファイト一発激のびーる君』のことを知っているのかというと、ずばり監視カメラを設置しているからなんだけど。朝のやり取りで、もしかしたら勘付かれてしまったかも知れない。だからあいちゃんがわたしの服を取りに行ってくれてるうちに、回収しておかないと。
「あいちゃんの部屋が鍵つきじゃなくて良かったよ~」
部屋に入ってから、まずはカーテンが閉められているか確認した。……よし、閉まってる。
もし開いていた場合、わたしの部屋に着いたあいちゃんから、カメラの回収をするためにあいちゃんの部屋で作業してるわたしの姿を目撃される危険があった。
わたしの部屋からあいちゃんの部屋が丸見えなんだよね。
「さ~て、それじゃあ回収作業始めちゃうよ~」
と言っても、無線型だから特別なことは必要なくて、本体を持ち去るだけでいいんだけど。
ちなみに隠し場所は企業秘密です!
よしっ、あとは誰にもバレないように、このカメラをわたしの鞄に入れるだけだね。
鞄は脱衣所にあるし、あいちゃんが戻ってくる前に、脱衣所に入って隠しちゃえば分からないはず。ひまちゃんは多分、今もお風呂に入ってるだろうし、多少ガサゴソやっても大丈夫だと思う。そうと決まったら、あいちゃんが帰ってくる前にさっと移動しなくちゃね!
「ねえねえももちゃん、おそかったね! なにしてたの?」
「ううん。なんでもないよ~。ちょっとあいちゃんと話してただけだよ~」
「ふ~ん、まあどうでもいっか。それより、ももちゃんももちゃん、いまからせなかあらいっこしようよ」
「いいよ~。やろうやろ~。ひまちゃんの身体ぴかぴかにしちゃうよ~」
ふう、よかった。とりあえず誰にも見られずに鞄に隠せたよ。あとはこのままわたしの部屋まで持って帰れれば万事解決だね。
「じゃあはじめに、あたしがももちゃんのせなかあらってあげるね!」
「うん。ありがと~ひまちゃん」
そう言って、ひまちゃんに背中を向ける。
すると、すかさず腋の下から腕を通して、わたしの胸を鷲掴みしてくるひまちゃん。
「あ~、このマシュマロおっぱいきもちいいよー」
「ちょっ! ちょっとひまちゃん!?」
「んー、なーにー。ちょっともん……すでであらってるだけだよ?」
「今揉んでるって言いかけなかった!?」
「そんなことないよー? ただうしろからむねをあらってあげてるだけだからきにしないでいいよ」
そう言いながら、わたしの胸に添えた手に力を込めて、嬉々として洗っていくひまちゃん。
「あっ、ちょっ、まっ、くすぐった……まってまって、あ、あ~ん」
こうしてひまちゃんの気が済むまで、わたしの嬌声がお風呂場に響き渡ったのでした。もちろんこの後お返しはさせてもらったけどね。
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