第5話同じクラス

「三組、三組……ここだな」

「うん」

 結局おれと桃は二人揃って一年三組だった。

 さっきの女子が何組になったかは知らない。

 だってストーカーじゃあるまいし、そんなの一々訊いて『えー何この人、超きもいんですけどー』とか思われたくないじゃん。

 それに、貼り紙を確認した後、すぐにトイレに直行してたようだったから訊く暇もなかった。

 まあ、これであの子とは、もう会うことはほぼ無いかな。

 さて、教室へ入るか。

「…………」

 それにしても、緊張するなあ。昔から毎年こうなんだが、どうにも初めての教室ってのはこう……圧迫感がある。今から知らない奴が大勢いる場所に入ろうとしているんだから当たり前か。一瞬の躊躇いの後、ゆっくりと教室の扉を開ける。

 机が、横六列、縦六列の計三十六脚並んでいる。

 教室を見渡すと、皆中学からの友達なんかと談笑している。

 とりあえず、ヤンキーっぽいのはいないみたいで安心した。

 というか、知ってる奴自体一人もいなかった。

「さて、おれの席は……」

 廊下側から数えて四列目の最後尾か、悪くないな。

 桃は……。

 おれの前の席に腰掛けるところだった。

「あいちゃんの左の席だね~」

 ああ、うん、そうだろうと思ってたよ。

 クラス分けが五十音順で書いてあったし、席順もそうだろうなと思ってた。

 姫宮桃と北条葵で、苗字が結構近いので、進級した時なんかは同じクラスになった場合、高確率で席が隣同士になる。

「ああ、もう恒例行事みたいになってるな」

「うん、それじゃ~また席替えまでよろしくね~」

 ガラッ。

 桃と、とりとめもない雑談をしていると、教室に二つある扉のうち、後ろの方の扉を開いて誰かが入ってきた。何気なくそちらの方に目をやると、入室してきたのはさっきのパンツ撫子ちゃんだった。へー、この子もお同クラなのか。

 むこうも俺たちに気づいたようで、ニコリと微笑みながら、優雅におれと桃の方に歩いてくる。そして廊下側から三列目の最後尾、つまりおれの右隣の席に座るパンツ撫子ちゃん。

 おお、なんか運命感じちゃうなあ。

「さっきはどうもです。私の名前は高嶺桜といいます。まさか同じクラスになるとは思っていませんでした。これからよろしくお願いしますね」

 ペコリと会釈をする、パンツ撫子ちゃん改め高嶺桜さん。

「おれは北条葵、こっちこそよろしく」

「わたしは姫宮桃だよ、よろしくね~」

 キンコンカンコーン。ガラッ。

 再開の挨拶が済んだところで、チャイムが鳴り響き、一泊おいてから担任らしき人物が入室してきた。まるで仲間のピンチの瞬間を見計らって、一番格好良いギリギリのタイミングで助けに入るべく機会を窺っている、バトル漫画の主人公か、ライバルキャラみたいな完璧なタイミングだった。

ていうか、本当に待ってたんじゃないの? この先生。

 先生は教壇に立ち、それから今日の日程やらを長々と話し始めた。

 今日は入学式の後、ホームルームが終わったら昼で下校のようだ。

 ほとんどの奴がそうだと思うけど、昼で帰れるのって謎のワクワク感があるな。

「それじゃあ、出席番号順に並んで体育館へ行きます」

 先生の号令で、おれを含むクラスメイトが、ぞろぞろと廊下に列を形成していく。

さて、入学式か、おれの戦いはこれからだ……なんてな(笑)。

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