放課後の狂騒 前編
「ねえベンベ、今日、本当に行くの?」
掃除が終わった直後の教室でいつものメンバーで駄弁っていると、シュワちゃんが俺にだけ話しかけてきた。
「あの話か?」
最近の峠といえば思い当たる話題はその話しかなかった。
「そう、『あれ』のことよ」
「おいおい、二人でなんの話だよ」
カッキーが茶化しに入ってきた、しかし俺とシュワちゃんはそんな気分ではない、なんせ『あれ』の話なのだから。
「まあお前らが知らないのも無理はないさ」
「なんだよ、勿体ぶって」
「そうよ、気になるじゃない」
「ねぇ、なんの話?」
カッキーだけでなく、佐々木さんと中根まで食いついてきた。
「ベンベ、教えてあげる?」
「仕方ないな」
できればあまり話したくなかったがここまで興味を持たれては仕方ない。気が重くなりながらもゆっくり口を開いて語り始めた。
あれは確か、シュワちゃん二人で久しぶりに峠を流していた時。夕陽が真っ赤な日だったな。頂上から三つ目のコーナーに差し掛かった時、夕陽の陰から赤いテールランプが見えた。一瞬シュワちゃんのテールかとも思ったが俺が先行してたはずだ。それにGAGのテールランプとは明らかに形が違った。その時の俺のバイクがレッツ2だったが、少なくとも俺よりは遥かに速かった。
コーナーを抜けた時には既に差がついていた。焦燥に駆られ急いで追いつこうとさらにスピードを上げ、次のコーナーに突っ込んだが差は縮まらなかった。立ち上がりの直線でそのバイクが夕日に照らされた。ロングタンクにロケットカウル、大昔のレーサー、例えればRC116のような車体。そうDREAM50だった。
後から付いてきてたシュワちゃんも徐々にスピードを緩め、なんとか二人で麓の駐車場までたどり着くことが出来た。その時汗が止まらずミラーを見ると顔が真っ青になっていた。なぜだと思う? そのバイク、コーナーを曲がった後消えていたんだよ、置いていかれたとかじゃなくさっきまで響かせていた4ストロークの鼓動も、赤く光るテールランプも。
一通り話終わると、俺もシュワちゃんもあの時と同じように顔が青ざめていた。
「ま、まさか、ただ置いていかれただけじゃねぇの?」
「私たちが置いていかれたのは否定しない……でもあの走りは異常だった」
シュワちゃんの言う通り、流していただけのつもりがいつのまにか限界までアクセルを開けて、メーターも張り切っていた、それでも追いつかなかった。
「それで、その話がどうしたの?」
中根は動じた様子がなく聞いてきた。
「正体が何であれ峠で売られた勝負だ、バイクのせいにする気は無いが、条件を対等にして勝負をする」
そう言い放つとシュワちゃんと目を合わせた。実はあのDREAMに勝つために二人でバイクを用意して練習をした。そして3人を尻目に俺の家へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます