第98話 ユウ、21歳の誕生日

3月9日は、ユウの誕生日である。ユウも21歳となった。


この1年で、ユウは雰囲気が変わった。可愛い少女から大人びた美人になったのである。それは、サークルの部長を務めたからだろうか?

以前は、リンと並ぶとリンが姉、ユウが妹のように見えたが今はぱっと見はどちらが年上か分からない。


リンは嬉しくもあり、寂しくもあった。


今回の誕生日のパーティーは、『ワンスモア』の主催で行うことになった。ユウを慕うカナや静里、美宇奈が自分たちも参加したいと譲らなかったからである。


なら、別に二人のパーティーを、とリンは考えたが、ユウは断った。二度も料理を作ってくれるハルの負担を考えたのだが、リンはいたく傷ついた。


リンも、もういいかと思っていた。しょせん自分も友人の1人に過ぎない。自分はずっとユウのそばにいたいが、ユウのためには少し離れたところで見守った方がいいのかもしれない。


パーティーで後輩に囲まれて、ユウは笑っていた。前は自分しか見ることができなかった笑顔が、みんなに向けられている。


リンは所在なく、お酒を飲んでいた。その姿をハルが横目で心配そうに見ている。


パーティーは盛会のうちに解散となって、リンとハルはタクシーで家に帰った。ユウは明日朝早くから用事があるとかで、自宅に帰ってしまった。ハルはぐでんぐでんに酔っ払ったリンを何とかソファまで運んで、お茶を入れて持って来た。


改めてユウ先輩を呼んでパーティーをしましょう。ハルはリンにお茶を渡した。


「もういい、もういいよ。」


リンの両目から涙がひとすじ伝わった。リンが泣くのは、初めてユウとリンの誕生パーティーをした時以来だった。それからは、リンはユウとずっと笑っていた。


変わらなければいけない。ユウが大人の雰囲気を漂わせる女性になったように、リンも成長しなければいけないのだ。


ハルがリンの頭を抱き寄せた。


「リン先輩、泣かないで。」

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