第79話 ユウ、20歳の誕生日

ユウの誕生日は、3月9日である。とうとう、ユウも20歳となった。去年は『ワンスモア』でパーティーをしてくれたが、部員も増え、それぞれの誕生日にパーティーをする訳にも行かないので、ユウが今年のパーティーは辞退した。


ユウの誕生日の翌日に『ワンスモア』のポタリングがあった。五色も来て総勢8人で、地元をふらふらとする。最近、五色は『ワンスモア』のイベントによく参加するようになった。パーティーとかでは五色の美味しい料理が食べられることもあって、五色は歓迎されている。ポタリングも終わって、ユウがよく行くタルトの美味しいカフェに入った。ユウがいつものようにコーヒーとタルトを頼もうとすると、誰も飲み物だけでタルトやケーキを頼もうとしない。不思議に思っていると、カフェの店主が大きなケーキを持って来た。


そのケーキはハッピーバースデー ユウとチョコの文字で書かれたプレートと20の数字のロウソクが立てられているバースデーケーキであった。ロウソクに火を着けて、『ワンスモア』のみんなが歌い出す。


「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディアユウさん、ハッピーバースデートゥーユー。」


リンに促されて、ユウはケーキのロウソクを吹き消した。みんなが拍手する。

店主がケーキを切り分けてくれた。


ケーキを一口食べる。店主が「お味はいかがですか?」と尋ねた。


「こんな美味しいケーキは初めてです。」ユウは泣いていた。

「こんな嬉しいサプライズも初めてです。」リンがユウの肩を抱いて、ハルがハンカチでユウの涙を拭く。


リン以外のみんなは高校時代までのユウを知らない。きっとユウが感動しやすい女性なのだと思っただろう。普通の少女なら当たり前のように経験していたはずの友達たちとの交流。


ユウには忘れられない、20歳の誕生日となったのだった。

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