第73話 ユウとリン、泣きつかれる

1週間後、再び清空寮で説明会が行われた。今度は前回の女性職員の他に上司である部長と課長がやって来た。


まず部長が前回の説明会について謝罪した後、課長から新たな提案があった。


新たな住居は大学がマンスリーマンションを手配する。

家賃は卒業まで大学持ち、保証人も大学がなる。

引っ越しも大学指定の業者が無料で行う。

その代わり、すぐにでも転居してほしい。あれだけ雨漏りしてしまうと漏電による火災の恐れがある。


だいたいこんな内容だった。


変人だらけの寮生ではあるが、利にさとい人間の集まりでもあったので概ね話はまとまって、明日にでもマンスリーマンションの見学に行くことになった。


翌日、『ワンスモア』の部室にハルはにこにこしながら、やって来た。どうやらマンションを気に入ったらしい。次の日曜日は両親に事情を説明するため、小諸市に帰省すると言う。




日曜日の夕方、ユウとリンが買い物から戻るとリンの家の前にハルが座っていた。ユウとリンに気付くと、目にいっぱい涙を浮かべる。慌ててハルを部屋に入れ、テーブルにつかせると、お茶を出した。


「どうしましょう? 親に小諸に帰って来いと言われちゃったですよ。」


ハルは泣き出した。


「約束と違うって。小諸に戻って家から通える大学を受け直せって。」


「一生懸命勉強して、ようやく受かったのに。サークルに入って、友達もできたのに〜。」


「今から勉強しても、名前が書ければ猫でも入れるような大学しか無理ですよ〜。」


猫が字を書くかなあとユウは思った。同時にお盆にあった時のハルの両親のイメージと違うような気がした。そんな頑固なことを言うような人たちには思えなかった。


リンはハルの話をずっと黙って聞いていた。


「次の日曜日にご両親に会わせてもらえないかしら? 私が説明してみる。」

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