第56話 シティサイクルの修理
「何でタイヤ交換はできないんですか? 大した手間じゃないと思いますが。」
ユウはミトに尋ねた。
「スチームローラーやロードバイクならね。シティサイクルは大変なのよ。」
ミトは答える。
シティサイクルの後輪はスチームローラーと同じで、大体は後ろに引いて外すようになっている。だが、たいていのシティサイクルはドロヨケが付いているので、自転車によっては、まずドロヨケを外すなりしないといけない。
また、後輪のハブに変速機が組み込まれていることが多くシフトワイヤーがハブにつながっている。ブレーキもバンドブレーキと言って、ハブに取り付けられているので、ブレーキワイヤーを外さないと後輪が取り外せない。
センタースタンドもハブ軸のナットで一緒に取り付けられているから、外さないといけない。
これらの手間を省くため、フレームを左右に広げて車輪をそのまま下に落とすようにできる工具がある。スチームローラーに使われているクロモリなどと違って、シティサイクルのフレームに使われているのは軟らかい鉄なので、そういう事も可能なのだが素人がそれを使ってフレームを破損させてしまったら、シャレにならない。
価格の安い自転車ほど、修理のことを考えていない、つまり整備性が悪く、部品の材質も良くないので、修理中の破損の可能性も高い。
そんな訳で『ワンスモア』では、シティサイクルの後輪のタイヤやチューブの交換は断っているということだった。だから、パンク修理もパッチを貼って直せるものしか引き受けられない。
ユウは、なるほどなーと思った。何事も理由があるものだ。
次の日、またパンクの修理が持ち込まれた。その自転車もサビだらけだったが、ミトは今度は引き受けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます