第52話 リン、拒否される

ある日の晩、ユウはリンと揉めていた。


「やだ、やだ、やーだ。一緒に入ろうよ。」


「入りません。」


「いーじゃん、お風呂くらい〜。」


「ダメです。」


「ズルいよ、ユウは私の裸見たじゃん!」


「それとこれとは、別です。」


「じゃあ、ユウは温泉に行っても一緒に入ってくれないの?」


「温泉ならいいです。自宅のお風呂はダメです。」


「わかった。じゃあ見ないから! 目かくしするから!」


手足をジタバタさせながら、駄々をこねる成人女性は、あまり可愛くなかった。


ユウも正直もう面倒くさくなっていたが、リンとお風呂に一緒に入ってしまえば、今度は洗いっこしよう等と言い出しかねないので、ここは妥協しないことにした。


結局、リンは諦めて、先にお風呂に入り、ふてくされて寝てしまった。

その後、ユウもお風呂に入り、リンの寝室のとなりの和室の布団で寝た。


真夜中になって何か気配がして、布団の中に入って来た。夢うつつのユウは、キラかな?と思った。ユウの家の飼い猫は、よくユウと一緒に寝ている。撫でてやろうと手を動かそうとした瞬間、ユウはここがリンの家であることを思い出した。


「えええええ、リリリリンなの??? 」


「どどどどどどどうしよう。大声出した方がいいのかしら???」


どうしたらいいのか分からずに、ユウは固まってしまった。リンはぴったりユウにくっついた。ユウは心臓がバクバクしている。


しばらくすると、寝息が聞こえた。どうやらリンはそのまま寝てしまったらしい。ユウもほっとして、そのまま寝てしまった。


明け方になって、リンはそっとユウの布団から出て行った。




翌朝、ユウは風邪をひいて、リンのベッドに寝かされていた。リンに布団の真ん中から押し出されて体が冷えたらしい。


申し訳なさそうに看病してくれるリンに、


「今度からリンのベッドで一緒に寝させてもらっていいですか?」


ユウは言った。


リンはすごく嬉しそうだった。まあ、一緒にお風呂に入ったり、風邪を引くよりは、リンの大きなベッドに一緒に寝させてもらった方がいい、そう割り切ることにしたユウだった。

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