第47話 リンの成人式
今日は成人の日である。
朝からリンはユウの家にスチームローラーでやってきて、ユウの母と美容院に向かった。そして、ユウやユウの母も利用している美容院『サロン・ド・リリー』で、ヘアメイク、メイクとユウから借りた振袖の着付けをしてもらっている。
ふだんは全く化粧っ気のないリンであるが、整った顔立ちをしているので化粧が映える。小柄な店長の腕もいいのだろうが、すごい美人となった。付き添いのユウの母もびっくりしている。
着付けが終わって、スーツを着たユウとユウの父が車で迎えに来た。2人もびっくりしている。ユウはスマホでリンの写真を何枚も撮った。ユウは来年、自分が着てもこれほどきれいにはならないだろうと思った。まあ、リンがきれいなのが嬉しいと思えばこそ、悔しくはなかったが。
車で予約した写真館に向かう。4人で写真を撮った後、ユウとリンの2人で撮り、更にリン1人でも撮ってもらう。
市役所が主催の成人式には、べつに知り合いもいないので欠席することにして食事に行こうという話になったが、リンはその前に普段着に着替えたいと言った。正直、振袖は苦しいし、メイクも馴染みがない、それに万が一ユウに貸してもらった振袖を汚してしまったらと思うと落ち着かなかった。
他の3人はきれいなのにもったいないと言ったが、一旦、ユウの家に戻って着替えることにした。普段着姿でメイクを落としたリンは、さっぱりしたというような表情をしている。
駅のそばの気取らないフレンチレストランで食事をした。その後、ユウの家で夕方まで過ごした後、リンはスチームローラーで家まで帰った。
数日後、写真ができてきた。大きくプリントされ、額縁に入れてある。1人で撮った写真を抱えて、仏壇を開けた。父と母の遺影に写真を見せるようにして、心の中で語りかける。
「パパ、ママ、成人式で振袖着させてもらったよ。」
父と母が生きてたら、成人式で振袖を着てたかな、とリンは思った。案外、着させてもらっていたかもしれない、最近リンは両親のことをそんな風に考えられるようになった。
ユウと2人で撮った写真を見る。スーツのユウと振袖姿のリン。きっと来年は、振袖姿のユウとスーツのリンの写真を撮ることになるのだろう。
ユウとその両親との4人で撮った写真を見て、リンは本当の家族みたいと思った。それぞれの写真をどこに飾るか、リンはちょっと悩んだ。この写真は寝室に置いて、リビングの仏壇のとなりには、ユウと2人の写真を置くことにしたのだった。
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