第27話 リン、水遊びがしたい

梅雨が明けた。そろそろ本格的に、夏である。


夏は、自転車乗りにはつらい季節である。汗はかくし、体力も消耗する。熱中症も怖いし、日焼けも気になる。


なので、そろそろ2人のポタリングも夏休みといったところだった。今日も地元を軽く流して、カフェでコーヒーとケーキ。楽しくおしゃべりして、帰路に着く。


落合川おちあいがわの遊歩道をのんびり走っていると、落合川いこいの水辺という広場で子どもや親子連れが水遊びをしていた。このすぐ上流に、南沢湧水群みなみさわゆうすいぐんという東京都で唯一「平成の名水百選」に選ばれた湧き水があるので、泳げるほど水がきれいで、川遊びに遠くからやって来る人も多い。


リンは、そのいこいの水辺の浅瀬で、遊んでいる子どもたちをうらやましそうに見ている。ユウはいやな予感がした。




「ユウは、ここで遊んだことある?」


「こっちに来たのは、小学五年生の時だからないですね。」


「私たちも遊ぼうよ。」


「年を考えてくださいよ。」


「じゃあ、夜来よう。」


「夜の方が危ないし、私たちも危ない女だと思われます。」


「じゃあ、どうしろって言うのよ。」 リンは逆ギレした。



ユウはため息をつく。夏休みになったらプールに行こうと提案した。リンの顔がぱっと輝く。



「本当? ユウ、約束よ。ユウの水着はビキニね♡、絶対ビキニ。私が選んで、買ってあげる。」


「ビキニはいやです。」


ユウは返しながら、リンは、以来、甘えん坊になったような気がすると思った。


ユウとしては、とりあえずこの場をしのいで、やり過ごそうと思った。夏休みになれば、自動車教習所通いが始まるし、アルバイトをする予定もある。プールに行く余裕もないし、リンも、そのうち忘れるだろう。


が、次の週、ユウはリンに南沢みなみさわのショッピングモールに連れて行かれた。水着の特設会場で試着させられまくる。リンは嫌がるユウに、試着だけだからと言って、さんざん色々なビキニを試着させた。それで満足したのか、遠慮するユウにフリルの付いた可愛いセパレートの水着を買ってくれた。リン自身は、競泳用みたいなシンプルなセパレートの水着を買った。


水着まで買ってもらった以上、もうプールに行かないわけにはいかなくなった。買ってもらった水着は、恐縮してしまうような高級品で、ユウが着るととても可愛く見えたので、ユウもプールで着たいと思うようになった。


結局、夏も終わりを迎える頃、2人はホテルのプールに行った。お気に入りの水着で手をつないで泳いだり、プールサイドでトロピカルドリンクを飲みながら、ゆっくり過ごす贅沢な時間を楽しんだのだった。


プールで、リンがユウの水着姿の写真を撮りまくったのは、言うまでもない。後日、リンにその写真を見せられたユウの母は、なぜか嬉しそうだった。



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