第23話 ユウ、リンの家に泊まる

6月10日は、リンの誕生日である。今年で20才になるから、もう大人、少女とは言えない。


ユウは、そんなリンのために何かしてあげたいと本人の希望を聞いた。

リンは、ユウのお泊まりでパーティーをしたいと言うので快諾して、お泊まりなら翌日はゆっくりしようということで、土曜日の夜にパーティーをすることにした。


土曜日の夕方に、母が作ってくれた料理のタッパーや父が持たせてくれたシャンパンの小瓶、お泊まりセット等をスチームローラーに載せる。


リンの家に着くと、シャンパンを冷蔵庫に入れ、ダイニングのテーブルにクロスを敷いて、お皿に母が作ってくれた料理を彩りよくよそっていく。


その様子を、リンはワクワクした顔で見ている。


全部支度が済むと、すっかり日も暮れた。

ユウは2階の和室を借りて、持ってきたワンピースに着替える。

リンもパタゴニアのカジュアルなドレスに着替えた。


テーブルランプを付けて、部屋の照明を落として、向かい合って座る。

ユウがシャンパンを開けて、二つのグラスに注ぐ。グラスを持って、


「リン先輩、お誕生日おめでとうございます。カンパーイ。」


「ありがとー。」


二人は軽くグラスを合わせた。リンは一気にシャンパンを飲み干す。どうやらリンはいける口らしい。ユウはまだ未成年なので、軽く口をつけるだけにしておいた。


ユウはきれいにラッピングされた小箱を、テーブルの上に置く。


「これ、私からのバースデープレゼントです。」


リンが感激したように手を口元にやって、言った。


「指輪♡?」


「違います。」


リンはガッカリした様子で、箱を開けた。でも、中を見て、すぐ笑顔になった。中に入っていたのは、小さな自転車のベル。アメリカ製で真鍮で作られている。鳴らすと、小さいながら立派な響きの音がする。


「ユウちゃん、ありがとう。これ前から欲しかった。」


リンは、ベルのハンドルにとめるバンドに指を通して、顔の前に手をかかげ、指輪みたいに眺めた。


料理を楽しみながら、会話をする。しばらくすると、シャンパンも食事もあらかた終わって、一旦片付けることにした。普段着に着替えて、2人で食器を洗う。


お風呂を沸かして、だいぶシャンパンで酔っ払ったリンが、お風呂に一緒に入ろうとせがむのを、さすがに断って、リン、ユウの順番で入る。


寝間着は、いつものリンのくたびれたTシャツとスウェットパンツではなく、ユウが持ってきたパジャマを2人で着る。


リビングのソファに並んで座り、映画のDVDをBGMにしながら、おしゃべりを始めた。

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