第22話 リン、猫に睨まれる
ユウとリンは、充分休憩を取ってから、
翌日の月曜日、リンが大学に来たところ、ユウのシングルスピードがない。大体いつもは、朝ユウが先に来ていて、挨拶を交わしてから互いの教室に行く。
一応、ユウにメールを送る。
昼休みになっても、返事がない。リンは気が気ではなくなった。高校で陸上部だったリンにとっては、昨日の道は大したことはなかった。でも、ユウにとっては、かなりきつかったのかも知れない。午後の授業が終わると同時に、ユウの家に向かって走り出した。途中、行きつけのカフェに寄って、ユウの好きなタルトを買う。
ユウの母が、リンを迎え入れてくれた。昨日の夜は、別に何もなく元気だったが、今日の朝になって熱が出て、体のあちこちが痛いと言い出した。今は、鎮痛剤を飲んで寝ているとのこと。
「すみません、私が無理させたからです。」リンはユウの母に謝った。
「ユウは子どもの頃から疲れると、よく熱を出していた。気にしなくて大丈夫よ。」
リンは、そっとユウの部屋に入る。ユウの部屋に入るのは初めてだったが、意外と殺風景な感じだった。畳の部屋にベッドと本棚、洋服タンス、丸いちゃぶ台があるだけである。リンは、もっと少女趣味な部屋を想像していた。ベッドにユウが寝ている。顔が赤くて、息が少し荒い。ベッドに乗っている猫が、お前のせいだというような目でリンを睨んだ。
10分程、ユウの様子を見ていたが、起きそうもないので帰ることにした。
夜、家でぼーっとしていると、ユウからメールが来た。
「お見舞いありがとうございます。ちょっと疲れちゃったみたいです。心配しないでくださいね。」
リンは、ホッとした。翌日の朝、またメールが来る。
「おはようございます。だいぶ良くなりました。念の為、今日も休みます。」
水曜日の朝、リンが大学に着くと、ユウが立っていた。
「おはようございます。心配かけて、すみませんでした。」
「ごめんなさい、私が無理させた。」
「これからもリン先輩と一緒に走れるように、頑張って鍛えます。」
ユウは自信に満ちた笑顔を見せた。それは、リンも初めて見る笑顔だった。
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