第6話 ユウ、悩みを打ち明ける

振り返ると、先輩が立っている。先日とは違って、嬉しそうな、優しそうな目でユウを見ている。


今更、逃げることもできない。ユウは率直に自分の自転車の悩みを話した。


先輩は少し考えていたが、おもむろに言った。


「明日の土曜日は、授業は昼まで?」


ユウはうなづく。


「授業が終わったら、ここに来て。たぶん解決できると思う。」


先輩は自信ありげに言った。





土曜日の授業が終わって、ユウは急いで駐輪場に向かった。先輩はまだ来ていない。


5分ほどして、大きなカバンを持って、先輩がやってきた。


自転車を木陰に持って来るように言われて、駐輪場から出して来る。

先輩は、小さなピクニックシートをカバンから出して広げた。その上に、さらにカバンから色々出して並べていく。アルミのシルバーのラック、何枚かのチェーンリング、ステム、その他、細かいパーツ、工具、新聞紙などなど。


「私のマシンに乗ってみて。」ユウは先輩の自転車に乗る。


「ちょっと漕いでみて、ペダルの重さはどうかしら。」駐輪場の端から端まで、往復してみる。自分の自転車よりずっと軽い。スピードは落ちるが、これなら途中の坂道を登れそうだ。


「これくらいがいいと思います。」先輩は、うなづいた。


先輩は、まずサインペンでフレームとシートポストの境目に印を付けて、元のサドルの高さがわかるようにした。シートクランプを緩め、サドルごとシートポストを抜く。シートクランプをフレームから外し、持って来たシートクランプと替える。このシートクランプには、ラックのステーを留めるためのネジ穴が付いていた。


アルミのシルバーのラックの脚をフレームのエンドに付いているダボ(ネジ穴)にボルトで軽く留める。 ラックから前方に出ているステーをシートクランプのネジ穴に同じようにボルトで軽く留めた。シートポストを戻して、印の位置でシートクランプを仮留めする。ラックの上に、建築で使う水準器を置いて、ステーの長さを調整して、ラックが地面と水平になるようにしてから、全てのボルトをきっちりと締めつけた。


フレームのシートステーに付けていたリフレクターは、ラックの脚に付け直した。


次に、自転車のチェーンを工具で切り離す。チェーンは新聞紙の上に置く。チェーンリングを留めているネジを緩めて、チェーンリングを外して、また新聞紙の上に置く。チェーンリングをよく見ると、48という刻印があった。


「フリーホイールは18歯か。」先輩は呟いた。



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