第8話

目を見開いてこちらを見る二人の視線を受けながらもただじっと目の前を見つめる。


地に咲く花よ空を見ろ

野に咲く花よ水を見ろ

君らより強い者がいる

植えられた花は

人がいなければ生きれない

アスファルトに咲く花は

自らの力で生き抜く

アスファルトに咲く花になりたい

自分の力で

誰にも迷惑かけずに

ただ強く生きていたい


いつだか修哉がいっていた事を心の中で繰り返す。

脳内に浮かぶ昨夜兄と見た夜空を描く。

あんなにも素敵な星空を

こんなにも素敵な親友たちが笑っていられる世界を

この手で守ることが叶うのなら

僕は今抗おう。





「僕は警察官になりたいです

そのためにまずは警察学校を卒業する

僕は、、、

助けられなかったという後悔

失った悲しみ

その人がいないという恐怖

失ったのだと再確認した時のどうしようもない喪失感

何もしなかった自分への怒り

不適切な対応で苦しんでる人悲しんでる人、

流した涙をこぼした嗚咽を揉み消されてかき消されて

なんで、そう嘆いている人を知っているから

自分が正義だとバカみたいに正義感に酔ってるバカどもを裁いて

この世の中を、偽善を、虚偽を、虚像を、腐敗を、、

、この手で、きちんとした正義で、、塗りつぶしたい」


ふざけるな、激怒して殴りかかる叔父さんの腕に目を瞑る。

殴られる

わかっていた

こんなの僕の綺麗事で認められないことも何もかもわかっていた。

それでも、、言いたかった。


来るはずの衝撃がなかなか来ない





「晴くんよくできました」








「それでこそ俺の弟だよ」







叔父さんの手を掴んで優しく笑う兄がそこにはいて、

兄が来てくれた安心感と

褒められた嬉しさで

思わず視界が歪んだ。




「この数ヶ月俺だってただのんびりしてたわけじゃないんですよ

晴くんがいうことを聞いたと思って俺に手を出さなかったのが

あんたの誤算だ日向咲先生。」


「だからなんです?たかがガキの戯言です、ことが大きくなる前にあなた方みんなを潰せばいい問題でしょう?」


「だからそれは無理だよ日向咲先生

俺の診断書や修哉くんの診断書、あなたのアリバイも全て調べ上げ修哉くんに頼んであんたが晴くんに行って来た数々の脅しは全て録音させてもらったしあなたの家からあなたの指紋付きの凶器も回収させてもらった

それらすべてをもう警察に提出させてもらってる

あんたの教師生活も人生ももうチェックメイトだ」


「っ、なんでそこまで」


「なんで?そんなの当たり前だろう?

俺の弟をなかせて苦しませてやっとの思いで掴んだ夢も希望も踏みにじって

汚れた心を言葉を、この世の、現実を、嫌という程目の当たりにしてきて、それでも、誰かを救おうと、がんばってる、夢を描いてる、こんな腐った世界で、唯一望んだ未来を、夢を、金のために、利益のために、地位のために、そんなんのために

ましてや自分の娯楽のためだけに踏みにじって

俺の弟が涙を流した、苦しそうなつらそうな表情で無理やり笑う原因になった

それだけで俺がお前らを潰す理由には十分だ」


そう吐き捨てて僕を撫でながらもう大丈夫、そう笑う兄に

呆然と立ち尽くす日向咲と叔父さんのことを置いて教室から連れ出される。







「お兄ちゃん、、、、、、いつかっ」


言いかけた僕の口を塞いで兄が微笑む。



「いつからだろうと関係ないよ

俺は弟に夢を叶えて欲しかった、、、、それだけだからさ」




















その後、兄の提出した物件証拠のおかげで日向咲の悪事は表沙汰になり

それに加担したということで叔父さんも逮捕された。

平穏な日常が戻ったのだ。

僕の夢への最初の一歩が歩み出された日である。


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