第2話
目がさめるとそこは真っ白な壁に包まれた病室だった。
青い病院服に身を包んだその姿は病人そのもので、手から繋がれている点滴のチューブを見やると、あぁ、またここにいるのか、というのを嫌でも実感させられた。
「、、起きた、?」
隣で仮眠をとっていた、おそらく僕につきっきりだったであろう拓哉さんはふわりと安心したような笑みを浮かべてこちらを見た後そう問いかけて来る。
その姿を見てやっと昨夜の惨劇を思い出す。
「っ、!お兄ちゃんと、修哉はっ!!!」
思い切り掴みかかったため、少しだけ肩を痛そうに見た拓哉さんには悪いと思ったがそんなことよりも彼らのことが心配だった。
「大丈夫、二人とも助かったよ、いまは仮眠をとってる、、、二人とも晴が倒れたって聞いて焦ってたぜ?」
「そっか、、、よかった、、、、」
「晴の止血が早かったのと適切だったおかげだそうだ、よかったな」
「っ、、、よか、た」
彼らのことを助けることができたのは自分の対応のおかげだったと聞けば安心したように力が抜ける。立っていた足からは力が抜けそのままベットに倒れこむ。
慌てた様子の拓哉さんに「大丈夫」そう声をかけ再びベットに横たわる。
飲み物を買って来る、そういって外に出た拓哉さんのことを見送れば、ぼーっと天井を見つめた。
どうして僕らがこんなことに巻き込まれるようになったのか。
生きるか死ぬかを毎日生きるようになったのか、きっと始まりは些細なことで、それでも大きなことで、自分たちのプライドがあまりに高かった教師達は孤児である僕らが思い通りにいかなかったのに相当苛立ったようで、社会的弱者で抵抗などが簡単にできない僕らのことを社会的に消して自分たちの地位を守るために奮闘しているようだった。
要するにただの逆恨みである。
「晴、、、晴?、、、、、、おい、晴ってば!」
不意に声をかけられ慌てて飛び上がればそこには不満そうに立っている都さんと呆れたように立っている拓哉さんがいて、あぁ、また自分はこの二人の語りかけを無視してしまったのだと申し訳なくなった。
昔からの癖だ、何か考え事を始めると周りの音が一切聞こえなくなってしまうのは。
「んで、お茶と炭酸どっちがいいわけ」
「お茶がいいかな、」
「ん」
「ありがと」
都さんからお茶を受け取るとそれを喉に流し込む。
ほろ苦いお茶の味が口の中に広がり意識が冴えていく。
「お兄ちゃん達は、どこ」
「東棟の二階801号室」
「ありがとう」
そう、感謝を告げれば兄の元へ走る。
正直な話、走ったら怒られるのだけれども、
「お兄ちゃんっ!修哉っ!!!」
思い切り扉を開ければ(怒られるけど)二人がこちらを見る。
泣きそうなのをこらえて飛びつけば驚いたように笑っている二人が居て、
「あ、、、晴」
「晴くん、、、、?」
二人が笑っているのを見て安心感から涙が出る。
大丈夫だよ、と撫でられる。それが嬉しくてさらに涙が出る。
後遺症もなく無事だったのが嬉しくて馬鹿みたいに泣き喚いた。
「ちょ、、晴くん、、泣かないで」
なんて慌てたように笑う兄のことを軽く叩くと誰のせいだ、そう喚く。
すると少し困ったように眉を下げ再びごめんね、そう謝られた。
「お兄ちゃんは何も悪くない」
「でも大事な弟のことこんなに泣かせちゃって兄失格だよ」
「ううん、、、ギュってしてくれたから許す」
「もー、晴くんはかわいいなぁ」
「可愛くないし」
なんて兄に甘えていたら不意に耳に入る声。
「あの〜いちゃつくなら他所でお願いします」
そうだったこの部屋には修哉もいたんだった。
それに気づいて僕の顔が羞恥に赤くなったのは言わなくてもわかるだろう。
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