2-3
翔也は座ったりうつ伏せになったり仰向けになったりと自由な体勢で台本を読んでいた。
その間勉強をしていた若葉だが、終わる頃に翔也に声をかけられた。
「セリフ覚えたかどうか確認したいからさ、付き合ってくれね?」
いいよーと言って若葉は台本を持った。
「んじゃ、一話からな。」
そしてセリフ確認が始まった。
最終回のセリフを全て言い終わる頃には若葉の目は台本ではなく、翔也を見ていた。
翔也は細かい言い回しは多少間違えていたもののほとんど正確に覚えていた。
「三日どころか二時間で覚えちゃったよこの人。」
全11話のドラマの台本を二時間で読み切り、内容をしっかりと覚えることの大変さは計り知れない。
これこそが彼の実力で才能で、人気の秘密なのだろう。
そして翌日、翔也は1人でセリフを喋っていた。
だが若葉は変化を感じた。
昨日も感情は込めていたものの、セリフを正確に言うことに気を止めていた。
しかし今日は既にしっかりと感情や表情が出ており、まるで会話している相手が見えるかのよう。
終わった後、若葉は思わず拍手をしてしまった。
「すごいね!まあ、プロにすごいって言うのは少し失礼かもしれないけど...。」
「そんなことない、嬉しいよ。監督の娘のくせに芸能全く詳しくない奴にも伝わったんだなーって。」
と笑顔で嫌味を言う。 素に戻った途端こうだ、やっぱり腹立つ。
どこが王子様だ。なにが王子様だ。
「ぜんっぜん王子様じゃない!」
1人絶叫しながら、部活へ向かう。
しかし、友達で翔也のファンである美零は彼をテレビで見れば王子様と言い、彼が演技で涙を流せば彼女も涙を流し五体投地するんだろう。
丁度今の若葉みたいに。
「武井!何をくたばってるんだ、立て!」
と顧問の怒号が響く。
若葉が所属する部活は、柔道部。
投げた投げられたが日常なこの場所で若葉は1人力なく横たわっていた。
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