1-3
次の日、学校へ行ったら案の定美零が
「若葉ちゃんのバカー!昨日留守にしたわね!」
と迫ってきた。
ああやっぱり来たんだ…と若葉はゾッとした。
「だって、どうしても出掛けなきゃ行けなかったんだもん。別にいいでしょ、私いいって言ってないんだし。」
と言う。どこに行ったかは絶対に言わない。
美零も聞きはしなかったが、ぷりぷりしたままだった。
そして時が経ちやっと翔也がクランクアップし、明後日北海道に帰ることとなる。
...のだが、美零が「今日こそあんたの家に行く」って。
「無いわ〜、そんなのねーわー!」
と叫ぶ。今度こそ逃げ場が無い。
家に駆け込んだ瞬間
「翔也ァ!あんたの持ち物と体を押入れに入れろぉ!」
と言うも
「意味わかんない」
と跳ね返された。
そこで訳をしっかり話した。
「ああそうなんだ…分かったけど狭いよ。」
「ごめんって、我慢して...お願い!」
するとチャイムが鳴った。
「うっわ、最悪。 ほら入って入って!」
と半ば強引に押入れに押し込めた。
玄関に出ると玄関に靴が置きっぱなしだったので、慌てて下駄箱に突っ込み、それからドアを開けた。
やっぱり、美零だった。
「久しぶり、変わってないね。」
「うん、そうだね。」
そしていつもの如く若葉の部屋に入った。
最悪だ。この部屋の押入れに翔也がいるのだから。
翔也が音を立てやしないかと若葉はびくびくしていた。
一方閉じ込められた翔也は、美零が入ってきた事を察して静かにした。
彼もまた、早く帰ってくれという気持ちでいっぱいだった。
でも流石に狭苦しいのですこし姿勢を変えた。
その瞬間、ふすまを思いっきり蹴ってしまった。
この音が若葉や美零に聞こえないわけがない。
「なに!?」
「ああ、部屋を適当に片付けるのに物を詰めたの。それが倒れたんだよ、最悪。」
若葉はとっさに話すが、心中では(翔也の馬鹿野郎、あとでノックアウトしてやる。)と言っていた。
六時になり、やっと帰ってくれたので若葉は翔也を出すためにふすまを開けると、暑かったのか汗だくだった。
「ごめんごめん、なかなか帰ってくれなくて。それより、なんで音たてるのよ!」
「ごめんごめん、ふすまが足元にあると思ってなくて…大変だな…。決めたことは一切動かさないし、好きなものに一直線な…ヤバい人…。」
美零のことは若葉はよく知っているので、苦笑いで聞いていた。
(美零よ、想像できるか…?お前たった今一番推してる俳優にやばい人認定されたぞ…。)
そして翌日翔也は北海道に帰っていき、若葉は元の日常を取り戻した。
帰宅後、お父さんの言葉を聞くまでは。
「翔也くん、東京で仕事ある時はうちに泊めるから。」
若葉は頭を抱えながら、ベッドに倒れ込んだのであった。
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