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そんな日々を過ごして数週間。そろそろ彼が出演しているドラマの撮影もクランクアップに近づいて来ている。


しかし、ずっと生きててここまで焦ることってあるのだろうか。


ある日、我慢出来なくなった美零が


「家のドア破ってでも入る」


と宣言してきたのだ。冗談じゃない、なんで入られなきゃいけないのだ。


「(あとちょっとで翔也も帰るし)あと3週間くらい待ってて!」


と言ったのに、彼女は聞く耳持たず。

一体若葉の家に何かいいものがあるとでも言うのか、全く理解ができない。


でもちょうどその日....


「若葉、ごめん。実はカチンコ家に置いてきたんだ。持ってきてくれないか?」


とお父さんから電話がかかってきた。


「分かった、今どこにいるの?」

「隣町の駅前の公園。そこでロケしてるから。スタッフ達には娘が来るって言っておくから、気にせずおいで。」


と言って、電話を切った。


「全くお父さんったら....ん?」


若葉はよく考えてみた。


今日は美零が来るかもしれない。もし家にいなかったら、家に入れない。


つまりあいつに翔也のことバレる心配が無い。


そう思うと途端に元気になって、トートバッグを取り出してお父さんの部屋に入り、カチンコを入れて意気揚々と家を出た。


隣町の公園。その最寄りに駅があったので電車で行くことにした。


いつだって満員の電車。すぐに降りるから許して!と思いながら乗り込んだ。


駅から出て、公園を探す。


「えーっと...あった!」


と言って、公園に入る。

すると、おじさんに


「おーっと、お嬢ちゃん。入られたら困るよ。」

と足止めされた。


「あの...私、武井の...」

「お、若葉〜!ちょっと、スタッフさん。娘が来るって言ったじゃないですか。」


とお父さんが苦笑いしながら、近づいてくる。


若葉は即座にカチンコを取り出し、渡した。


その時、スタッフの隙間から翔也が見えた。

翔也はこちらに気付いたのか、手を振ってきた。

若葉も軽く振り返した。


その時翔也のすぐ近くに、なんだかキラキラしたオーラのようなものを感じた。


長い髪の毛を風になびかせ、すました表情をとる美少女。


「...小西...世羅...?」


小西世羅(こにしせら)。最近デビューした若手女優。

その容姿と演技力から早くも人気者になった、中学三年生の女の子だ。


中学三年生ということは、若葉や翔也より一つ上。


たった一つ上なのだ。なのに、オーラや貫禄に溢れ、まだまだずっと年上のようにも感じる。


「監督さん、そろそろスタンバイですか?」


と、番組でよく聞く可愛らしい声が響く。



その美しさに思わず見とれ、


「シーン50番、本番五秒前...」


つい、撮影現場を生でガン見してしまった。

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