おつかれさまな話
藤宮藤子
1-1
ある日、クラス中の女子が興奮してキャーキャー言っている。
中学二年生の超美形若手俳優、高坂翔也のポスターを誰かが持ってきたからだ。
しかし一人様子の違う人がいる。
武井若葉だ。可愛らしいが、なーんか不機嫌そう。
「若葉ちゃーん、見てみて!かっこよすぎ、王子様みたい!」
と近づいてきた女子に対し
「どこが王子様なんだか。王子ならテレビの中でみすぼらしい格好しないよ。それに...はぁ...。」
「どうしたの?みんな翔也くんにキャーキャーするから嫉妬してんの?」
「馬鹿かお前は。単に芸能系に興味無いだけ。ハイハイ気ィ済んだでしょ?ほらいったいった!」
と虫を追い払うように追い払った。
しかし若葉は芸能に興味が無くてそんな事言ってるんじゃない。
本当の理由は...。
家に着くとすぐに戸を締め切り、チェーンまでかけてしまう。
すると背後から
「おかえり。」
と聞こえた。
「あんた!うかつに扉の前に立つんじゃないわよ!またうるさいのが来るじゃないの!」
「まだ一度も来たこと無いだろ。」
「とにかく!入ってくれ!」
そう、実は武井家にはあの超美形俳優こと高坂翔也が暮らしているのだ。
お父さんが監督で、彼は道民だからお人好しのお父さんが自分のドラマに出る彼を泊めている。
そんなお人好しのお父さんの娘なのに若葉は、翔也としょっちゅう喧嘩する。
若葉は柔道部でもトップクラスで怪力なので、身長が10cm以上差があり、体重もそこそこ差があるであろう翔也ともほぼリードした状態でやりあえた。
俳優の顔に傷でも付けたらお父さんにぶっ飛ばされそうなので、本格的に殴りあったりはしないが。
実際彼は芸能に興味の無い若葉でも、なかなか見ないイケメンだと思っているし、彼が出演した作品は見れる限り見ていた。
そして親友の安斉美零は彼のファンで、彼が出演する番組を見るといつも興奮する。
おかげで最近は家にも安心していられない。だって美零は親友のよしみでたまにアポ無しでうちに来るからだ。
だから最近は「来るな、来たら殺す」と脅しているが、向こうは理由が分からないため不機嫌だった。
理由なんて言えるわけがない、知られたら最後。
考えただけで若葉の胃が痛んだ。
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