第4話 親友

 季節は流れ、秋が訪れた。

 約束された刻限は確実に近づいていた。しかし誰もが日常に溺れ、定められた運命を忘れていた。

 そんなある日、ガンスティールは屋敷に画家を呼んだ。それは地元の山村で絵画の修行に励む若い学生だった。

 ガンスティールはその若い画家にあらかじめ報酬を与えてユノーの肖像画を描くように依頼し、給仕のシェンレイにユノーの世話を任せると自分はエルフィン舎の世話に行ってしまった。

 残されたシェンレイは、画家と家畜の世話を押しつけられたことに少々の不満を抱いたが、口には出さなかった。

「ユノーさま、あんまり画家先生をいじめないでくださいませ」

 ビノシェ農場に仕える若い給仕、シェンレイがやさしくユノーをたしなめている。

 画家先生、と呼ばれた青年は眉をひそめて困った振りをしながらも、黙々とキャンバスに木炭を撫でつけている。

 ユノーと呼ばれた少女は簡素なスツールに腰掛けて足をブラブラと揺らしている。その反動で、空中を眺める頭が前後に揺れている。これほど動いては彼女の姿を絵画として描きとめることもできないだろう。

 あからさまに退屈そうな表情はむしろ愛らしく、画家の青年も諦めて笑っていた。

 時刻が昼下がりということもあるが、屋敷の中に人がいるのはこのユノーの私室のみであった。他の者は農園で家畜の世話をしていることだろう。

「構いませんよ、この年頃ともなれば遊びたい盛りでしょうし」

 画家の青年は穏やかな表情でユノーを眺めた。

「それに、私も彼女を見ているとなんだか心が安らぎます」

 シェンレイと画家に眺められてもなお、ユノーは熱心に足を前後に揺らしていた。

 主人の娘が一体どのように描かれているのかと興味を持ったシェンレイは、そっと画家の背後にまわりキャンバスを覗き込んだ。

 そこに描かれていたのは、おとなしく椅子に腰かけて物憂げに眼を伏せる少女であった。

 雪のように白く短い髪。浅黒く灼(や)けたように黒い肌。潤んだ緋色の瞳。シェンレイより僅かに幼い顔立ち。そしてその年ごろの娘に相応のふくよかな腕と足。その身に纏っているのはユノーのお気に入り、薄緑色のドレスだ。

 かわいい。シェンレイは素直にそう評価した。

 確かに、口を開かずに大人しく座ってさえいればユノーはエキゾチックな魅力を持つ少女ではないか。

 だが。

「なぜお父様は今更私の絵なんて欲しがるのかしら」

 じっとりと、ユノーの口から怨嗟の言葉がこぼれた。それはまるで、彼女も人間と同様に退屈を嫌う生き物であると主張しているかのようだった。

 ユノーは、シェンレイの主人ガンスティール・ビノシェの娘である。表向きはその通りであった。

 けれどもシェンレイは内心の違和感をどうしても拭いきれない。何故なら、ユノーが主人ガンスティールの娘となったのはつい最近のことなのだから。

 そんなシェンレイの戸惑いを知ってか知らずか、ユノーは愚痴をこぼしながらその細く長く尖った耳をピコピコと上下させていた。 

 ユノーの長い耳の根元、ちょうど人間でいうところの耳たぶには、金属でできた小さな装具が取り付けられていた。そこには7741326という粗雑な刻印がある。人間の少女が着けるようなピアスなどの装飾ではない。それは個体を識別するためのタグだ。

 農業貴族ビノシェ家の一人娘ユノーは、識別番号7741326番のエルフィンであった。

 彼女の白い髪は繁殖力の高いベロニカ種の特有のものであり、褐色の肌は肉質の柔らかいラプラ種の特有のもの。ユノー・ビノシェは良質なエルフィンを生産するために品種改良された繁殖用のエルフィンだ。

 シェンレイが覚えている限りでは、半年前までは確かにそのためだけにこのビノシェ家の農場で飼育されていたはずだった。

 給仕の身分で言える事ではないのだが、シェンレイはその事態を異常であると考えていた。今でこそ事実として受け止めているものの、すべてを理解し納得しているとは言い難かった。

 エルフィンの身でありながらビノシェ家の娘として迎えられたユノー。

 シェンレイは目の前で不満を言う家畜を眺めながら、どうしてこんなことになってしまったのかしらと好奇心本位で思案した。


 シェンレイは思案する。彼女にとってエルフィンは家畜であった。物を言わず、ただ人に食されるために生産され消費されるだけの存在のはずだった。シェンレイでさえ、そんなことは知っていた。ではなぜ主人ガンスティールは家畜に衣服を与え、発言を許し、私室まで与えているのか。そもそも世継ぎのいないビノシェ家において何故、家畜を娘として扱うことになったのだろうか。

 もちろん、シェンレイの心持ちもこの半年間で随分と変わった。

 まず、人語を解さないと思い込んでいた家畜のエルフィンがこれほどまで感情を豊かに表現するということを受け止められるようになった。それまでシェンレイが知っていたエルフィンとは、白い撥水タイルの上で無気力に横たわる、人間によく似た生き物であった。エルフィンの注文が多い時にはシェンレイもその屠畜を手伝ったことがあるが、彼らは全て無言で枝肉になっていったはずだ。痛みを感じるかどうかすら判別しがたい生き物だった。

 それが今では、気ままに振る舞うユノーに憤りさえ感じる程にエルフィンというものを自分と対等な存在として認識していた。

 そしてシェンレイは、ユノーに嫉妬していた。エルフィンのくせに、ユノーが貴族の娘という身分を得たのだという事に対してだ。しかもユノーは彼女自身の裕福な生活に不満を漏らしている。

 主人がユノーを娘と呼ばなかったなら、あの真っ白な撥水タイルのエルフィン舎に連れ戻してやるのに、とすらシェンレイは思った。もし本当にそうしたらユノーはどんな声で鳴くだろうかと残虐な妄想がシェンレイの脳裏に広がった。

 しかし、彼女がそんな妄想に耽ったのはほんの一瞬だった。それはあまりに残虐な妄想であったからだ。シェンレイにはその妄想の続きを容易に想像できた。きっとユノーは今と同じような調子で気だるげに空中を眺めるだけなのだろう。今エルフィン舎に戻ったところで、ユノーが生きてきた十余年と何も変わらない、真っ白な撥水タイルを眺めるだけの生活に戻るだけなのだろう、と。

 白いキャンバスに描かれたユノーのスケッチは、まるで彼女が生きてきた世界のように白く、そして小さな枠に切り取られていた。


「よく描けているじゃないか」

 仕事を終えて屋敷に帰ったガンスティールは、若い画家が描いた肖像画を大いに褒め称えた。

 彼は絵の出来栄えに納得したようで、食堂に飾るべきだと言った。

 屋敷の給仕が数人がかりで肖像画を食堂に運び、壁に飾ろうと高く掲げた。そこで、給仕の中でもこの屋敷に長く勤めるエメトが絵を見てこう呟いた。

「あら、その絵は屋根裏の倉庫に仕舞ったはずではないの」と。

 その言葉を聴いて、食堂にいた給仕すべてが気づいた。

 雪のように白く短い髪。浅黒く灼(や)けたように黒い肌。潤んだ緋色の瞳。ふくよかな腕と足。それらが、主人ガンスティールが十数年前に描いたという恋人の肖像画の女性と酷似しているということに。

 

 月日はさらに流れる。

 ある寒い冬の朝、ガンスティールの旧友であるオディナロが尋ねてきた。冬があければオムニバルが始まるので、そのための準備を手伝いたいとあらかじめ手紙で連絡してきていたのだ。昔から親交のあったオディナロはガーベント領と王都オルパスの中ほどにあるユーラ地方の豪族の息子であり、自領地の農業発展のために各地を放浪中であった。

 ガンスティールは国王に献上するユノーのほかにも、オムニバルのために通常のエルフィンを飼育していた。大陸全土でオムニバルの時期に重なってエルフィンの注文が入る。ユノーも元はオムニバルに出荷するエルフィンを生むための母体となるはずだった。

 また、オムニバル直前の加工だけでは一度に大量の食用肉を出荷する事は出来ないため冬の間から加工し保存しておくものだった。オディナロからは冬季の加工保存の工程を学びたいから見せてくれと言われていた。

 屋敷に来たオディナロがユノーを見たとき、絶句していたようだった。「前もって手紙で彼女の事を相談されていなければガンスティールの正気まで疑うところであった」と後でガンスティールは彼から聞かされた。


 さっそくガンスティールはオディナロと共にエルフィン舎に向かった。他の従業員も出勤してきていたので、早速エルフィンの屠畜作業を始める事にした。

 ガンスティールの農場は特別大きいわけではないが屠畜・精肉場が併設されているため、枝肉の状態で市場に出荷する事が出来る。他の農家と同様に、強い要望があれば生きたまま出荷する事もあった。

 レインコートを羽織ったガンスティールはオディナロの目の前で手際よくエルフィンを肉へと変えていった。飼育場から連れてきたエルフィンを一人ずつ小部屋に入れ、台の上に寝かせて眉間にツルハシを突き立てる。痙攣が治まるまでツルハシをねじって脳をかき回す。その間に他の作業員が頚動脈をナイフで裂いて血を抜くと共に食道を縛る。勢い良く飛び出す血液は頭上まで跳ね上がった後、シャワーのように降り注いだ。ある程度血流が収まると片足で逆さ吊りにし、天井に設置されたレールのフックに取り付けて隣の部屋へ移送する。屠畜されたエルフィンが隣の部屋に行くのを確認して水道管のバルブを開くと、天井から水のシャワーが噴出して部屋の血が洗い流されていく。ナイフとツルハシは浄化水槽に入れられ消毒される。丁寧に一頭ごとに作業を繰り返していく。

 出荷用のエルフィンは主に生後十年ほどのものを使用する。牡牝の差がほとんどなく、ある程度成長していることが望ましいとされていたからだ。それでも二次性徴の見られない牡牝が区別無く手際よく屠畜されていく様はオディナロにとって衝撃的なものではあった。オディナロもオムニバルの時期には儀礼としてエルフィン肉を食べるが、あれらの肉料理はこのように生産されているのだということを改めて実感した。

 屠畜作業が終わるとガンスティールは最後の肉を天井にぶら下げて引きずりながら隣の部屋へ移動した。あわててオディナロも追いかける。

 眉一つ動かさずに淡々とエルフィンを屠畜するガンスティールに、オディナロは底知れぬ恐怖を覚えたのだった。オディナロは、ガンスティールがつるはしで自分の額を貫く場面さえ想像した。

 隣の部屋では既に他の従業員によって解体作業が進められていた。

 ぶら下げられて屠畜部屋から出てきたエルフィンは首を切り落とされ、腹を裂かれて内臓を抜かれ、皮をはがれた。手首、足首を切り落とされた後は背骨から左右に切り分けられ、二つの枝肉になった。この状態で保存され、出荷されるかもしくはオムニバルの時に取り出される。頭部と内臓は腐りやすいので、検品されてすぐに出荷される。皮は廃棄される。エルフィンの皮を皮紙として使う風習もあったが、製紙技術が発達した今は皮紙専用のエルフィンが飼育されている。

 オディナロは解体作業を軽く手伝わせられただけだったが、気分が悪くなったようだった。

 生き物の肉を食べるという事は、自分が生きるために他の生き物を殺すという事である。人間も動物の一種である以上その摂理から外れる事は出来ない。しかし人間は役割を分担する事で各分野への専門性を高め発展してきた。それと同時に、生き物を殺して加工しその肉を食べるという生命活動としての一連の行為が、殺す事と加工する事と食べる事が既に分離されてしまっている。生きるために食べる、食べるために殺すという概念さえも分離されてしまったのだ。だから、食べ物が生き物だったという事実、生きるために殺しているのだという事実に直面すると目を背けたくなってしまう事もあるのだろう。

 そんなオディナロの様子をガンスティールは悪いとは思わない。多くの人間がオディナロと同様の反応を示すのだから。


 全ての枝肉を倉庫に運ぶ最中に、オディナロがガンスティールに話しかけてきた。

「屋敷にいたエルフィン、あれがドミノ・オムニバルに出す奴か」

 ドミノ・オムニバルとは来年開催される狂食祭の通称で、来年は国王アラクトの七十二年目の聖誕記念祭とあわせて行われるため王都では聖・狂食祭、ドミノ・オムニバルと呼ばれているとの事だった。

「俺が知っている『満足なエルフィン』とは違うな」

 オディナロがそう言った言葉の意味をガンスティールは気になり問い直した。

「俺の郷には関係ないから詳しくは知らないけどな」

 オディナロが説明するところによると、今年の春以降ある料理が王都を中心に噂になっているのだという。前回のオムニバルで異国から献上されたものを国王が食べて気に入ったようで、国王の機嫌を取ろうとその料理の研究が国内各地で盛んになっているそうだ。

「王都近隣の、領主イサクのマキシム領がわざわざ外国人を連れてきて料理を研究していた。俺も満足なエルフィンとやらは食べた事が無いが、飼育している農場は知っている。調べてみる価値はあるんじゃないか」

 オディナロの言葉が本当だとしたら。ガンスティールは当ての無い飼育方針に光明がさしたと思った。今まで王都からは助成金が来るばかりで『満足なエルフィン』がどういったものなのか分からなかった。料理に付けられた名前とも知らなかった。ドミノ・オムニバルを主催する聖誕祭準備会も詳しく分かっていなかったのかもしれない。残りの四ヶ月の飼育の役に立つのならば、『満足なエルフィン』について詳しく知っておく事は悪くない。

 三日後、ガンスティールはオディナロの案内でマキシム領を訪ねる事にした。


 領主マハエルのガーベント領から領主イサクのマキシム領まではおよそ五日間かかる。馬車でガーベント領の中心にあるマハエル城下町まで三日かけて行き、丸二日かけて鉄道に乗るのだ。鉄道とは工業的な発達を遂げたマキシム領が開発した交通機関であり、いまや大陸ウェルトゥムを治める二十四の領地を繋いでいる。鉄道が無い頃をガンスティールは知っているが、王都から彼の農場まで伝令役が来るのに三ヶ月かかっていたはずだ。

 ウェルトゥム王国が内包する二十四領地。これらの特徴は、領地という枠組みに囚われすぎていたために各々の領地ごとに全く異なる文化が発達した事にある。隣り合った領地であっても、境界線を越えた途端にまるで別世界、というのは当たり前の事になっている。それは、各領地の長である領主が他領地の文化を受け入れるのを強く拒んでいたからだった。そのため、かつてこの大陸に共通していた文化を基盤としてそれぞれが独自の発展をしていた。そのように発展してきたウェルトゥムの文化も、この鉄道という交通手段の登場によって領地の枠組みを越えて混合されつつある。

 二週間ほどの長旅になると思い、ガンスティールはユノーを連れて行くことにした。また世話係として給仕のシェンレイもついてきた。

 ユノーはお気に入りの緑色のドレスを着て、つばの広い帽子をかぶった。寒さよけのための耳あてで長い耳を押しこんでいるので一見すると人間に見間違えるかもしれない。ユノーにとって屋敷の外で外泊するのは初めてだった。ガンスティールの気まぐれで屋敷の外に連れ出されることはあったが、いつも夜までには屋敷にもどっていたからだ。

 道中の暇つぶしにユノーが長話をする度に、オディナロはその博識ぶりに驚いていた。また王都からの給金のほとんどが自分の食費や娯楽費にかわっているという話などは特に彼の興味を引いたようで、何度もその話を詳しく訊いていた。

 オディナロの出身である領主サラのユーラ領を含むユーラ地方ではエルフィンよりも大トカゲを主に飼育している。エルフィン肉よりも大トカゲ肉の方が好まれ、また大トカゲは労働力にもなっているという。ユーラ地方では馬車の代わりに二足走行の大トカゲに引かせる蜥蜴車と呼ばれる乗り物が一般的であることも有名で、領主サラはトカゲの女王とまで呼ばれ親しまれているとのことだ。

 旅の三日目の夜には予定通りマハエル城下町まで着いた。城壁の外で一泊した後、同じく城壁の外にある駅から鉄道に乗り込むことにした。

 マハエル城下町は領主制度が出来る前から全く変わらぬ姿で存在し続ける城壁都市だった。なんでも、景観を壊さぬようにと老朽化した建物は同じ形のまま立建て直すのだという。古めかしいレンガ造りの家も内部は堅牢な鉄筋コンクリートで補強されているという。町の中心には領主マハエルの居城がある。町ごと城壁で囲っているため、この城自体には仕切りとしての壁は無かった。そのような町が、巨大な岩を積み上げて作られた壁の中にあるのだ。城下町に入る為の門は日が沈むと閉ざされ誰も入る事が出来ない。そのため門の外には小さな宿場町が形成されていた。門が閉まってから開くまでの間に旅人を寝泊りさせる所だったが、冬のように旅人の少ない時期は閑散としていた。

 翌朝、一行は昼ごろになって駅へ向かう。交通の便が良いようにと城門から徒歩で行けるほどの距離に駅はあった。駅は、よく見なければそれと分からぬ程度の物だ。地面を這う四本レール伝いにタイルで舗装され、ガーベント駅と書かれた看板が鉄柱に打ち付けられているだけでのものだった。

 しかし、驚くべきはその駅の広大さである。線路伝いに舗装された道があると思って五分ほど歩いていたら鉄柱を発見し、ガーベント駅・王都方面と書かれていた。そして後ろを振り返ると遥か後方にもうひとつ鉄柱があり、タイルの道はそこで途切れる。つまり、あまりに長すぎて道にしか見えぬ物が駅だったというわけだ。

 ガンスティールたちがそこで一時間ほど待っていると、山の谷間から大きな黒い影が見えた。黒い煙を上げながら走るそれはマキシム領が誇る蒸気機関車であった。ひとつひとつの車両が小規模な家ほどあり、それが二十四両編成という恐ろしく巨大な物体だった。

 車両に乗り込む入り口に係員がいて、そこで金を払った。運賃と引き換えに客室の鍵を借りて、車内への階段を上った。入り口の隣に見える車輪はユノーの身長とほぼ同じだけの大きさがある。これだけの巨大な鉄製品を鋳造する技術はまだガーベントにも無い。

 車内に入ると二層構造で、中には多くの客室があった。その中から自分たちに割り当てられた部屋を見つけて入り、ようやく落ち着く。電車は一時間後に出発した。

 四本のレールの上に車輪を乗せて走るその鉄の塊は乗り心地が悪く、レールの継ぎ目で生じる定期的な振動が内臓を揺さぶるようであった。二日間この振動に耐えねばならないと思うと一同は憂鬱になった。

 これから行くマキシム領は工場産業という手法によって飛躍的に発達した領地である。工場という作業所に労働者を集め、工程を分割して特定の単一作業にだけ特化するように労働者を教育する事で生産性の向上をはかったシステムだそうだ。ひとつの簡単な作業だけさせる事で得られるメリットは、覚える作業の単純さからどんな人でも早く習熟できる事と、労働者には単純な労働力だけを求められるので労働者の取り替えが利くということにある。また蒸気機関という動力の発明によって、ごく単純な反復作業は人手を使わずに行うこともできるようにもなった。その蒸気機関は未だ研究がなされているばかりで実用されている例が少ないが、唯一大衆からも受け入れられ生活に役立てられているものがこの蒸気機関鉄道だった。

 一定のリズムで振動する車両と旅の疲れから、一同は二日間の行程をほとんど寝てすごした。


 マキシム領の中心地であるイサク城下町は常に空が澱んでいた。急速な発展で町は広がり、城壁が取り壊されて町が延々と続いていた。

 町は縦横無尽に広がっている。法則性も無く、秩序も無かった。廃墟同然の町並みにガンスティールらは辟易した。建物と建物の隙間には人が住めないほどの細い家が割り込んでいた。つぶれた家を取り壊さずに新しい家をそのまま乗せていた。あまりに高い建物は自重で崩れていた。さらに、それだけ建物が放置されていても路上で生活する者も見えた。道路に面した壁が崩れ落ちているのもかまわずに営業を続ける工場もあった。

 城下町から馬車で半日経ってもそのような町は途切れず、目的のエルフィン農家も住宅に取り囲まれていた。

 その農家は一見すると単なる集合住宅のようにも見えた。というのも、他の建物同様に大通りに面して建っており、塀なども無く、簡素な扉が建物の壁にあるだけだったからだ。

 まずオディナロがその建物の扉の横にある呼び鈴を押した。しばらく待つと従業員と思われる女性が扉を開けて彼らを迎え入れた。

 マキシム領の畜産農家リトはガンスティールと同年代の男だった。白髪まじりの髪を短く切りそろえ、髭をきれいに剃っていた。

 リトはオディナロと見知った仲のようで、ガンスティールの訪問を快く受け入れてくれていた。

「初めましてガンスティール。君の噂はいつか聞いたことがある。私がここの工場長、リトです」

 リトは自分を工場長と紹介した。彼が言うには、この領内ではエルフィンの生産も工業としてみなされている為に工場長と名乗らなければ補助金を受け取れないとの事だった。

「十数年前からこの農場も精肉工場として経営している事になっています。エルフィンの飼育はおまけのようなものと考えられているようでね」

 リトは薄緑色の帽子と同じ色のツナギを恨めしそうに引っ張って見せると、すぐに飼育場に案内してくれた。

 ガンスティールのエルフィン舎に比べれば小規模ではあるが、内容は特に変わらない。ただガンスティールを驚かせたのは、そこに働く従業員の姿についてだった。

 全員、耳をそぎ落とされている。

 リトは初め、全員耳の病気にかかったと説明した。しかしガンスティールに指摘され、すぐに言い直した。一般の人間には見分けもつかないだろうが、ガンスティールはすぐに気付いたのだ。そこで働いているもの全てがエルフィンであることを。

「そうだ、全員エルフィンだよ。ここで働いているのはね」

 リトは事情を説明する。十数年前、農場が工場と言い換えられる前からここではエルフィンを労働力として使っていたのだそうだ。しかし工場という名称を付けさせられると同時に、労働組合から『市民に労働を与えるように』との通達があり、人間の従業員を登録しなければならないと言われたのだそうだ。産業の発達によって人口が爆発的に増え、巷に労働力が溢れかえり、結果大量の失業者が路上生活をしているため、事業主は労働者を雇わなければならないということになったらしい。エルフィンに働かせるぐらいならば人間に労働を与えろと。さもなくば援助を打ち切ると。

 しかしリトは自分の農場、今の工場に赤の他人を受け入れる事を強く拒んだ。そこで今までいた従業員のエルフィンたちは自ら耳を切り落とし、従業員は全員人間でありこれ以上労働者を雇う事はできないと労働組合を説得してしまった。労働組合の調査員には耳の有無でしか人間とエルフィンを見分ける事が出来なかったので説得に応じた。もちろんその調査員はごく一般的かつ常識的に、エルフィンにはその様な抗議行動が出来るはずがないとの判断をしたまでだった。またこの農場に就職を希望する者も他の従業員の切り落とされた耳の跡を見て辞退していったという。

「時代の変化には逆らえないのかもしれないね」

 そうつぶやいてリトは帽子を取って頭をボリボリと掻き毟った。彼も自ら耳を切り落としていた事に気付かされた。自分のために耳をそいだエルフィンに償うためだろうかとガンスティールは察した。

 飼育場の後は屠殺場、精肉場を見学させてくれた。屠殺場はガンスティールのエルフィン舎のものと大差なく、雨合羽を着たエルフィンが裸のエルフィンを次々に銃殺していた。精肉場は自動機関が導入されており、内臓を取り除かれ屠殺場から自動的に運ばれたエルフィンの肉塊が一瞬でミンチにされていく様子が見られた。

「今では加工肉しか売れなくなってね」とリトは説明する。ミンチ状にしたエルフィン肉の練り物は食べ残しが少ないという利点がある。着色料や保存料などを混ぜる事で色も良く日持ちも良くなるから今ではこれしか出荷していないのだそうだ。


 リトは見学ルートの説明を終えると、一同を食堂に案内した。見学者にはいつも工場産の肉料理を振舞うのだという。給仕姿のエルフィンが温かい料理を運んできたのは練り物を利用した肉料理の数々であった。その給仕は褐色肌に長い白色の髪を伸ばし、赤い眼をした精悍な顔立ちの牝だった。年はおそらく三十歳近く、エルフィンにしては高齢だろう。ユノーはその給仕に対し親近感を抱いた。もしも来年のオムニバルで食べられなければ、このような美しい女性になれるのかと胸をときめかせた。そしてユノーの想像の中では大人になった彼女の隣にガンスティールの姿があった。それは、未来のないユノーにとっては過ぎた妄想でしかなかった。

 その給仕は料理を運びながらガンスティールをじっと見つめていたが、ユノーの視線に気付くと振り向いてユノーに優しく微笑みかけた。ガンスティールはその給仕がまるで存在しないかのようなそぶりを見せていた。もしくはあまりその給仕のことを意識していないのかもしれない。

 その給仕エルフィンをじっと眺めるユノーに対してリトも興味を示したのか、彼はその給仕を指して言った。

「お嬢さん、エルフィンが働いているのは珍しいかい。それはレナ。数年前からうちで働いているエルフィンだよ。誰かに愛玩用としてでも飼われていたのか、ここに来る前から言葉が喋れたんだ。名前は私が付けたけどね」

 リトに紹介され、レナは深々とお辞儀をする。

「初めまして、お嬢さん。レナです」

「はい、初めまして。私はユノー・ビノシェです」

 レナの礼に応えてユノーが自己紹介をした。レナはやわらかい笑みを浮かべていた。

 レナは料理を運び終えると、静かにリトの隣に立った。そして、用命があればいつでも声を掛けてくださいと言って一歩下がった。

 リトの呼びかけで料理を食べる事になる。そこでユノーが帽子を外すとリトは、ほぅ、と感心したようなため息をついた。

「ガンスティールさん、この子はもしかして」

 そしてリトはガンスティールから聞き出そうとじっと彼の言葉を待つ。

「私の娘ですが、なにか問題でもありますか。リトさんなら分かっていただけるかと思い連れてきたのです」

 ガンスティールは王都からの手紙とこれまでの八ヶ月を説明した。

 リトは真剣にガンスティールの話を聞いた。そして何かを取りに厨房へ行った。

 十数分後にリトが持ってきたのは一品の料理だった。小さな肉の塊が盛り付けられている。肉の繊維が見えるところから、練り物とは違う料理であることが伺える。

「これが『満足なエルフィン』です」

 リトは皿の上の小さな肉片を指して言った。そしてガンスティールの目の前に置く。

 促されるままにガンスティールはそれを食べた。

 蕩けるような食感のそれは確かにどのエルフィン料理よりも味わい深かった。

「これは、内臓ですか」

 一口食べてガンスティールは訊ねた。リトはその通りと答えたが、ガンスティールにはそれがどの器官かは分からなかった。

「これはね、肝臓ですよ。脂肪肝を発症しているから分かりませんでしたか」

 リトは、自分も『満足なエルフィン』を飼育するように準備会から指示されたと言った。そしてその事を領主イサクに報告すると、イサクは『満足なエルフィン』について外国に使者を派遣しその正体を探ってくれたのだそうだ。そうしてイサクの使者が調べた事の全てをリトに教えてくれたのだという。

「『満足なエルフィン』とはただの料理の名前でした。しかしその飼育法は特殊なものでしたので『満足なエルフィン』に使用されるための特別なエルフィンをこの工場では飼育しています」

 リトは一同が食事を終えるのを待つと、ガンスティールだけにその飼育法を教えるといってその飼育室へ案内した。時間がかかるからという事で、残されたオディナロは宿を探しに外へ行った。ユノーとシェンレイは食堂に残ったが、給仕のエルフィンの案内で工場内の他のエルフィンの飼育場を見学させてもらう事にした。


 ガンスティールがリトに連れられて到着したのは、工場の中庭だった。中庭の片隅に仮設の小屋があり、そこが特別なエルフィンの飼育場所だと教えられた。

 小屋には蒸気機関が設置されていて、地面からその微細な振動が伝わって小屋全体がカタカタと小さな音を鳴らしていた。

 厳重に鍵を掛けられた扉を開けて、二人は中に入る。暗くてよく見えないが、ものすごい悪臭が鼻を刺激した。腐敗臭と汚物の匂いである。

「こんなに厳重に鍵をかけて、中のエルフィンはどうなっているのですか。しかもこんな悪臭では肉に匂いが染み付いてしまいそうです」

 口で呼吸しながらガンスティールはリトに質問する。しかしリトは何も答えず小屋の中の明かりをつけた。これが答えだと言わんばかりに。

 そしてガンスティールはそれを見て全てを察した。

 その小屋の中には二十個ほどの装置があり、うち八個にはエルフィンが繋がれていた。残りの十二個にもかつてエルフィンが繋がれていた形跡が見られた。

 装置は部屋の中央から伸びてエルフィンの口につながれている。つながれたエルフィンは体を小さく折りたたんでかごの中に入っていた。かごの側面に頭と手を出す穴があり、エルフィンはその穴にはさまれて身動きひとつしていなかった。醜く膨らんだ体は自重で地面に押しつぶされている。排泄物はそのまま垂れ流されていて、尻は腐って半分溶けている。首と手はかごの穴に接するところから痛んでいて手首の骨が見えているものもあった。時折、部屋の中心の機械が音を立てるとエルフィンは体をよじる様にして悶えた。エルフィンの口と装置は強力に縫い付けられていたが、その縫い目からは液状の餌が零れ落ちていた。

「これが『満足なエルフィン』の為の飼育場です」

 リトは中央の装置だけを見て、八頭のエルフィンには目もくれなかった。

「初めは二十頭から始めたのですがね。六頭は試食に、もう六頭は腐って自然死しました」

 ガンスティールはその凄惨な現場から目が放せなかった。

「先ほどの少女、あれが君の『満足なエルフィン』だったのでしょう」

 リトは真っ直ぐに中央の装置だけを見ながらガンスティールに話しかけた。

「ずいぶん綺麗でしたね」

 ガンスティールは何も言えずに呼吸を荒くするだけだった。


「ほらぁ、ユノーさま。あっちのエルフィン見てください、交尾していますよっ。後学のために良く見ておきましょうか」

「遠慮します」

 ユノーはシェンレイと共に『エルフィン生産部』を見学していた。それはつまり繁殖場の事だった。

 シェンレイは初めて見るエルフィンの交尾に興味津々と言った様子で、柵の中で行われる繁殖行為の見学に夢中になっていた。一方のユノーはそんなシェンレイにまるで自分の交尾を見られているかのような錯覚に陥り、悶えた。

「エルフィンも人間もやる事は同じなのねぇ、素敵だわぁ」

 ユノーが静かに恥ずかしがる様子が可愛いと思い、シェンレイはわざと自分の感想を声に出してユノーに聞かせていた。

 一方のユノーはというと、柵の中で繁殖する裸体のエルフィンの熱気と匂いでむせ返りながら、目の前の光景が自分のことのように恥ずかしいばかりだった。そしてそれを友人となったシェンレイに見られるのも恥ずかしかったのだ。

 エルフィンの性は人間と同じく雌雄の二種類である。ただ生殖行為については人間とは異なる点がひとつだけある。

 それは、性交が妊娠出産の為だけにあることである。人間社会において性交は子作りのためだけでなく一種のコミュニケーションとして尊重されているのに対して、エルフィンは互いのコミュニケーションをする必要がない為に濃密な性交をすることが無い。ただ性的な愛玩用に教育されたエルフィンであれば人間に対しても同等の快楽を与える事が出来るとは言われている。

 シェンレイはオディナロが探しに来るまで嬌声をあげながらその繁殖場を見学していた。

 その間、ユノーはうつむいて頬を染めるだけであった。


「お世話になりました」

 日が沈み工場から帰るとき、ユノーはペコリとお辞儀をしてリトに礼を言った。リトは満面の笑みでユノーを見送ってくれた。

 オディナロはリトの工場の近くで見つけた宿に三人分の部屋を用意してくれていた。ガンスティールは工場に寝泊りして徹夜で飼育法を教えてもらう事になったらしい。だからオディナロとユノーとシェンレイが宿に泊まることになった。予定ではオディナロは故郷ユーラ領に帰るつもりだったようだが、先払いした宿賃が惜しくなったようで今夜は同じ部屋で寝るとのことだった。

 ここに来るまでの馬車での長話のお礼にと、オディナロは小さな首飾りをユノーにくれた。それは大トカゲの牙だという。

 それが何を意味するのかはユノーには分からなかったが、オディナロは「友情の証だ」とだけ言った。

 ユノーはそれを受け取ると、ベッドの中でそれをじっと見つめながら自然に眠りに就いた。

 翌朝、三人が宿の外に出ると既にガンスティールが馬車を用意していた。

「オディナロはユーラ領に帰るそうだが駅までは一緒だな」

 ガンスティールは徹夜で話でもしたのだろう、昨日よりも多少やつれて見えた。

 それから四人で駅に着くまでガンスティールは無言だった。


 イサク城下町の駅でオディナロと別れてからもガンスティールは一言も喋らなかった。

 定期的に体を揺らされる機関車の客室の中で、ガンスティールはリトの工場での昨夜のやり取りを思い出していた。

「私の領主イサク様が調べたのは、まず今年のオムニバルで国王アラクトに『満足なエルフィン』という料理を出した男についてです。

 その男の名はキーン・ヴァイオン、ウェルトゥム大陸の遥か東方にあるエアルト大陸の神聖帝国サージェスの宮廷料理人だったそうです。

 サージェスといえば、エルフィンを神の化身であるとして一切食わない事でも知っているでしょう。私たちからすれば不自然に見えるかもしれないですがそれが彼らの宗教なのですから非難するつもりはありません。その国の料理人である彼がどうしてわざわざウェルトゥムまで来てエルフィン料理を作り、こちらの国王に献上したのかは分からなかったようです。

 ですが、なんでも古代人に関する資料にあった料理を試してみたいとのことでした。自国では宗教上の理由からエルフィン料理が作れないですからね。料理人としての好奇心が一番の理由だったのかもしれません。そうして彼が再現したという料理が『満足なエルフィン』だったというわけです。

 彼は王都オルパスの秘密裏の支援の下、一年かけてその料理の為のエルフィンを飼育しました。初めの半年はエルフィンを活発に運動させて体力を付けさせて、残りの半年はエルフィンの首から下を地面に埋めて一日に三度も大量のイチジクを食べさせたのだそうで。運動できずに太り過ぎ、肝臓を病んだエルフィンこそが食材だったのです。

 その飼育法をされたエルフィンの肉は臭味が染み付いてしまいとても食べられたものではなかったそうです。確かに肉は食用にはなりませんでしたが、病んだ肝臓は舌の上で蕩けるほど柔らかく美味だったそうです。

 それにしても贅沢な料理ですよね。エルフィン丸ごと一匹を使って大量の餌を与えて、結局内臓ひとつしか使えないのですから。なにより王がその料理を気に入りまして、アラクトはキーンに莫大な褒美を取らせたとのことですよ。

 その後キーンの姿を見たものはいないとの話です。彼がどうなったのか。自国に帰って行方をくらませたのかもしれませんし」

 まるで自分が見てきたかのようにリトは長々と語った。

「それならば何故、王都はその飼育法を教えずに満足なエルフィンなどという曖昧な料理名だけを私たちに伝えて献上するように言ってきたのでしょうか」

 ガンスティールはこの八ヶ月の苦悩の種である核心について訊ねた。

 するとリトは突然辺りを見回し、小さな声で耳打ちするようにそれに答えた。

「おそらく、王都はエルフィン農家をつぶそうとしているのかもしれません」

 ガンスティールは耳を疑うよりも目の前の男を疑った。もしかしたらこのリトという男は極度の被害妄想に囚われているのかもしれないと思った。だがそのガンスティールの態度に臆する事も無くリトは続けた。

「信じられないのも無理はないでしょう。しかし王都の意思はひとつではないという事です。ある意思は王の暴食を許し、またある意思は暴食を理由に彼を引きずり降ろそうとしていると私は考えます。私たちにとってどの意思が良いのかはわかりません。しかし近いうちに国が荒れるのは確かです」

 物騒な事を言い出した挙句リトは、

「気をつけてください、秘密警察が動いているとの噂もありますからね」

 と締め括った。

 彼が妄想狂でないとも言い切れない。ガンスティールからすれば秘密警察の云々は気にもならなかったが『満足なエルフィン』の正体には衝撃を受けた。

 リトの言う料理が真の『満足なエルフィン』ならば、これまでの八ヶ月の間に自分がしてきた事は一体何だったのか。『満足なエルフィン』に対する自分の解釈の違いとユノーの今後の処遇について思い巡らせた。

 王都の意思でわざと間違ったものを作らされているのだとしたら、リトが言うように何らかの計略に巻き込まれている可能性もあるということだ。もし王都自身も例の料理について理解が十分でなく模索している最中なのだとすれば、曖昧な伝令の所為で間違ったものを作らざるを得なかったともなるが、はたして。

 さらにリトは思い出したように、ウェルトゥム王国の二十四領地の各一戸の農家が同様の伝令により『満足なエルフィン』を作らされているということを付け加えた。ガンスティールとリトはその二十四戸の内の二戸というわけだ。ガンスティールはこの八ヶ月間に何の疑問も持たずに受け取り続けた給金の出所が心配になった。自分には計り知れない謀略の意図が張り巡らされているのではないかという想像に空恐ろしさを感じた。

 彼らを乗せた機関車はガーベント領に到着した。

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