Scene49. 2月14日 (5週目) 昼3
「……何これ?」
俺が呆けていると、手紙が取り上げられた。
岡崎さんは手紙をくしゃっと手の中で握りつぶす。
「どうやら、一杯食わされた様ね」
岡崎さんは俺を置いて屋上の扉の方へスタスタと歩いて行った。
状況を飲み込めず、俺は慌てて岡崎さんについて行く。
「説明してもらいましょうか、こんな事をした犯人に」
岡崎さんは、屋上の扉を勢い良く開きながら言った。
犯人……?
開けられた扉の向こうでしゃがんで身を隠しているのは、森谷だった。
「や、やあ。2人とも」
「観念なさい、森谷くん。私の気持ちを弄んで、どう言うつもり?」
「いや、そんなつもりはないんだ! 信じてくれ岡崎さん……!」
「森谷くん、あなたなんでしょう? この手紙を私の下駄箱に入れたのは」
岡崎さんは身をかがめている森谷の足元に、握りつぶした手紙を投げ落とした。
森谷は怯えながら手紙を広げて、驚く。
「ち、違うぞ! これは小春ちゃんの家のポストに入れたやつ……いや、ちょっと文面が違うな」
おいおいおい。
森谷のやつ、自分でポストに入れたって自白したぞ。
「小春? ふぅん、なるほどね。屋上で城之内くんと小春ちゃんを引き合わせるつもりだったの」
「そう、そのつもりだった」
「それで、私と手紙を間違えてしまったという事なのかしら?」
「そんなはずはない……ですよ、岡崎さん! 岡崎さんに宛てた手紙も岡崎さんの家のポストに……」
おいおい、森谷。岡崎さんの家にまでそんなことをしていたのか。
「そうだったの……。じゃあこっちは本物の森谷くんからの手紙だったのね」
岡崎さんは制服のポケットから取り出した4ツ折りの紙を足元にポトリと落とした。
俺と森谷は顔を並べてその紙を開き、読む。
『岡崎さんへ
話したいとこがあります。
今日の昼休みに美術準備室に来てください。
森谷』
……岡崎さん。
この手紙を無視して屋上まで来たんだな。
俺はちょっと森谷に同情した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます