第4章【悠斗】 バレンタインデーは2度こないっ
Scene38. 2月13日 (5週目) 早朝
暗い部屋の中で目が覚めた。
何か長い夢を見ていた様な気分で、俺はベッドから身を起こした。
いつの間にか手のひらに乗せていた何かがベッド脇に落ちた。
「何だ、これ?」
俺は身をひねり、落ちた物をつまみあげる。
その瞬間、手にしたそれから電流が腕を伝って頭に流れる。
そして俺は思い出した。
小春が死んだ2月14日の事を。
枕もとのスマホを手にとって電源を入れる。
今日は2月13日、6時51分だ。
俺にとって2回目の2月13日なのだと分かった。
「助けなきゃ……」
俺は小春の顔を思い浮かべながら呟く。
自分が殺される事を知りながら俺を導いてくれた小春。
初めてのカラオケで、ゲーセンで、楽しそうにはしゃいでいた小春。
うす暗い部屋で呼吸を荒くして俺に抱かれていた小春。
自ら死を選んで俺に謝った小春。
全て、俺だけが知っている小春だ。
これから会う小春は、カラオケにもゲーセンにも行った事が無い小春だ。
それでもいい。
そんな所、これから俺が何度だって連れて行ってやる。
そうだ。
このループを抜け出して、未来を作って行こう。
俺は手に持ったペンダントをベッド脇のテーブルに置いて、学生服に着替える。
もう、これには頼らない。
これからの2日間でどんな事が待っていようと、俺はこの時間に生きて行く。
そう決意して、早々に家を出た。
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