Scene28. 2月13日 (4週目) 放課後
俺たちはチャイムが鳴るまで何となく裏庭で過ごした後、放課後にまた会う約束をして一度別れた。
一人になった所で、小春から聞いた事を自分なりに考えてみる。
さっきまで会っていた小春は、未来から来た小春らしい。
それは、いくつかの未来予知的な言動からなんとか信じることができた。
小春は、明日自分が死ぬと言っていた。
それも、友人のはずの岡崎さんに殺されて。
小春はそれを受け入れている。
むしろ、小春自身がそうなるように仕向けたようだ。
俺と小春は何度も交互に過去にさかのぼりながら、この事件の解決の糸口を探してきたらしい。
そしてようやく事件の発端を突き止めた小春は、俺の死に直面した記憶を引き継ぎたくないという理由で自ら殺される運命を選んだ。
俺だって小春が殺される所なんて見たくない。なんとか助けたい。
だけど……、小春自身が望むなら、俺にはどうしようもないじゃないか。
沈鬱な気分のまま俺は放課後を迎えた。
「悠斗、一緒に帰ろう」
小春はわざわざ俺のクラスまで迎えに来た。
「あ、ああ。行こうか……」
なんとか声を絞り出して俺はそれに応じる。
あぁ。なんでこんな時ですらお前は笑っていられるんだ?
俺はまともに小春の顔をみられない。
そんな時、呑気な声が聞こえてきた。
「なんだ、城之内は女の子とデートかー」
クラスメイトの森谷だ。
そう言えば今日は放課後にカラオケに行く約束をしていたんだった。
仕方ないけど、断ろう。
俺は小春の側に居てやりたいと思っていた。
「おう、森谷。悪いけどカラオケはまた今度な」
「リア充め、爆発しろ! へっへっへ」
森谷は約束を破られたというのに軽く返してくれる。
理由も聞かずに気遣ってくれる、そんな奴だ。
森谷はどうも、俺が小春に気を寄せていると思っているようだった。
なんでも、俺がいつも小春の事ばかり見ているからだと。
とんでもない。小春が俺の方ばかり見るからつい気になっていただけだ。
そう反論しようとも思ったが、子どもっぽいのでやめておいた。
ただ、俺と小春の仲を応援してくれている様だった。
……なぜ応援してくれるのかは、何となくわかるけれど。
「悠斗……」
小春が俺の制服の袖を引っ張る。
今日は小春と過ごそう。
そう思ったのだが。
いたずらっぽく小春が笑った。
「……私もカラオケ、行っていい?」
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