Scene27. 2月13日 (4週目) 昼2
俺は小春に連れられて校舎の裏庭にきた。
先程の事、天木先生と岡崎さんの会話について聞きたかった。
内容はともかく、まるでそういう出来事が起きるのを知っていたかのような態度が気になったのだ。
「小春、聞きたい事があるんだけど」
「あぁ、まだ言ってなかったよね。私が未来から来た事とか」
小春は少し照れ笑いをしながら、当然の事の様にそう言った。
「なんだって? 未来から……?」
「私はあなたを助けに未来から来たの」
「助けるって、何が……」
俺はとにかく小春に聞きたい事が山積みで、時間の許す限り、とにかく小春を質問攻めにした。
急に積極的になった小春の態度に圧倒されて変な勘違いをしたままだったらこの状況に受け身でいられたかもしれない。
だけど、あんな風に何が起きるか分かっていながら気丈でいようとする小春を見てしまっては、とことん付き合ってやらねばと思ったのだ。
そして俺は、俺と小春が過ごした繰り返しの2日間の事を聞きだした。
小春の主観が入り交っていたので解釈の難しい部分があったけれど。
「それで、俺が殺された未来から来て、今度はお前が殺される番だって?」
「うん。未来の悠斗が言っていたんだけどね。たぶんそうじゃないかって」
「それを知った上で、あの会話を聞かせたのか?」
「私も聞くのは初めてなんだけどね。ホントなんだなーって感じ」
「これから何が起きるかも知ってるんだな?」
「うん。私はもう最初の選択肢を間違っちゃったから、後の事はもう変わらないと思うな」
「最初の……?」
「そうだよ。悠斗も分かるでしょ? 今朝、私と悠斗が初めて会った時の事」
小春に言われて、思い出してみる。
「美術準備室で抱きしめられた」
「わわっ、ちがうよ! 悠斗のえっち……。そうじゃなくて、もっと前」
もっと前と言うと……。
「下駄箱の前を歩いてたら、急に声を掛けられて……」
「そう、それ。それがいけなかったんだよ」
「そんな事が?」
「あぁ、悠斗は見てなかったんだっけ。私が悠斗に声をかける前に……」
小春は深呼吸してから言葉を続ける。
「天木先生と話してたの。その会話を打ち切って悠斗と会ったら、もうおしまい」
さっき岡崎さんと殺人計画を話していた張本人だ。
あいつは、岡崎さんが小春を殺す様に仕向けていた。
「私が突然、天木先生から逃げたせいで……こんな事が起きちゃったの。精神的に不安定な可奈子ちゃんがそそのかされて」
小春は申し訳なさそうに困った顔をしながら言う。
俺が解せないのは、どうしてそんな運命を小春が受け入れているのか、だ。
正しい選択肢を知っていながらあえて間違って、俺にわざわざ事件のあらましを教えるなんて。
「ごめんね、悠斗。この事件は、悠斗に解決して欲しいんだ」
小春は涙を浮かべながら、それでも泣き出さずに言う。
「ごめん、ごめんね悠斗。これは私のわがままなんだ。せっかく悠斗が正しい道を教えてくれたのに。ごめんね」
涙がこぼれて制服を濡らしても、小春は続ける。
「お願い、悠斗が死んじゃった事を知らない私を、助けてあげて。私はもう、悠斗が死ぬのを、目の前で冷たくなるのを、知っちゃったから……」
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