Scene22. 2月14日 (2週目) 放課後1
ついにこの日の放課後が来てしまった。
だけど、森谷君は悠斗のおかげで何とかなったみたいだし、可奈子ちゃんも飛び降りなかったし、結構うまくいっているんじゃないかなって思った。
あとはこのペンダントを渡せれば……。
前回の今日は昼休みに事件が起きてしまったので昼以降の授業が無かったけれど、今回の今日はみっちり授業が入っていた。
おかげで、悠斗にまた会えるのがずいぶん遅くなってしまった。
私ははやる気持ちを押さえて悠斗に会いに行った。
「小春ちゃん……ちょっといいかな?」
私が悠斗の教室に辿り着く前に、声をかけてきた人がいた。可奈子ちゃんだ。
「可奈子ちゃん……どうしたの?」
「実は、折り入って貴方に相談したい事があるのよ。城之内くんの事で……」
可奈子ちゃんは言いづらそうに俯いたまま、私に視線を合わせずに呟いている。
どうしよう。
私は少し悩んだけれど、可奈子ちゃんの相談を聞くことにした。
悠斗だって、森谷君と話しあって解決できたんだもん。
私だって、可奈子ちゃんと話しあって、今日は何の事件も起きない平和な日にできるはずだよ。
……そう思っていた。
可奈子ちゃんは前回の今日、何か悩みを抱えたまま校舎から飛び降りてしまった。
前々回は、理由は分からないけど私を殺した犯人になってしまった。
きっと、何か人に言えない理由があるんだよね。
自分ではどうしようもなくて、そんな事件を起こしちゃったんだよね?
大丈夫、私も一緒に悩んであげるから。
……私は随分と無警戒に、可奈子ちゃんに付いて行ってしまった。
可奈子ちゃんに連れられて来たのは、ひと気のない美術準備室だった。
私は中に入る時に少しためらったけれど、いつもと変わらない物静かな場所だった。
当然、中は血に塗れてなんていなかった。
「相談って、何?」
私は軽い調子で話を振った。
可奈子ちゃんの手には何かが握られていたけれど、たぶん今日誰かに渡すチョコレートの包みだろうと思った。
今日、何度も見たあの黒い紙袋だ。
「じゃあ、聞くわね……小春ちゃんって、城之内くんと付き合ってるのかしら?」
可奈子ちゃんは唐突にそんな事を聞いてきた。
付き合ってる?
私が?
城之内くんと?
……そりゃ、もちろん。
そうなれたらいいとは思っていたけれど。
まだ……。
「付き合ってないよ?」
「そう。じゃあ、諦めてくれない?」
「えっ……」
「私ね、城之内くんの事が好きなのよ」
可奈子ちゃんはゆっくりと顔を上げた。
笑っていた。
「私は今日、城之内くんに告白するわ。だから、小春ちゃん……」
可奈子ちゃんはゆっくり近づいてくる。
どうしよう。
なんて答えればいい?
私がためらっていると、廊下からバタバタという足音が聞こえて来て、そのまま準備室の扉を開けて足音の主が入ってきた。
「小春! そいつから離れろ!」
「えっ?」
としゅっ
突然現れた悠斗に気を取られて後ろを振り向いた私に、可奈子ちゃんが抱きつくように重なった。
「小春ちゃん、お願い。消えて頂戴……」
耳元で囁かれる。
私は急に腰から下の力を失って倒れた。
見上げた可奈子ちゃんの制服が私の返り血で真っ赤に染まった。
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