Scene18. 2月13日 (2週目) 夜

 結局その日も悠斗の部屋に泊まるわけにもいかないので、少し話をした後に私は自分の家に帰ってきた。

 ゆっくりとお風呂に入って、考える。

 悠斗はあの日、可奈子ちゃんが飛び降りた時は私と一緒に校舎の裏庭に居たはず。

 さっき悠斗が言っていたのは、どういう意味だったんだろう。

 悠斗が可奈子ちゃんを殺した?

 だから悠斗は森谷君に殺された?

 悠斗には可奈子ちゃんを殺す動機なんて無いはず……。

 ううん、もしかしたら……悠斗も同じ理由だったのかも。

 前の2月14日に、私は可奈子ちゃんに殺された。だから悠斗はその仇を取ろうと……?

 なんて、考えすぎかなぁ。

 私は顔を半分湯船に沈めて、口からぶくぶくと空気を吐き出す。

 私も悠斗みたいに頭が良かったらなぁ……。

 そうだ。明日、可奈子ちゃんに相談しよう。

 もし何か思いつめているなら、私が聞いてあげなきゃ。

 私は悠斗の意志を受け継いで過去に戻って来たんだもん。

 明日、2月14日に何も事件が起きないように、私もできる限りの事をしなきゃ。

 私はそのままゆっくりと湯船に沈み、全身を温めてからお風呂を出た。

「でも、明日になるまでは何が起きるか分からないよねぇ」

 私はパジャマに着替えて部屋で髪を乾かしながら、明日の授業の準備をする。

 明日は、バレンタインデーだ。

 チョコレートはダイニングの棚にしまってある。

 それ以外にも買った物は、悠斗に渡したかったあの二重螺旋のペンダント……。

 あれ、そういえば悠斗がペンダントを持っていたって事は、殺されちゃった時の私は悠斗にペンダントを渡せたんだね。

 ちょっと、羨ましいな。

「私も、勇気を出してみようかな……」

 私は鍵のかかった引き出しを開けて、ペンダントの空箱を取り出す。

 シールが破けてしまうのは不格好だけど、仕方ないよね?

 箱を開けて、今付けているペンダントをその中に収めた。

「これで良し……」

 明日は悠斗に会ったら真っ先にこのペンダントをあげよう。

 ちゃんと悠斗に付けていて貰わないと。

『そうじゃないと……』

「あれ……?」

 私は、自分の頭にふと浮かんだ事を自分で理解できなかった。

 まあいいや、寝てしまおう。

 おやすみなさい。

 ……。

『そうじゃないと、悠斗が過去に戻れなくなっちゃうからね……』


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