Scene17. 2月13日 (2週目) 夕方
2日ぶりに、悠斗の家に来た。
私の体感では、ここに来たのは一昨日だ。
「どうしてもすぐに話したい事があるから」と、私は制服姿のままで悠斗の家に上がらせてもらった。
「おかえり、悠斗……。あれ、小春ちゃんも? ひさしぶりじゃない」
前回と同じ様に、悠斗のお姉さんの瑤子さんが出迎えてくれた。
「あ、あの……おじゃまします……」
お姉さんを見ると、どうしてもその豊満な胸に目を奪われてしまう。
私の視線に気付いたお姉さんはニヤニヤと笑いながら悠斗にも聞こえるように耳打ちしてきた。
「大丈夫よ小春ちゃん。コイツが持ってるエロ本あんまり巨乳の娘は載ってないから」
「姉さん! 小春に変なこと言わないでくれよ!」
悠斗は顔を真っ赤にしてお姉さんに抗議をする。
お姉さんはとても楽しそうだ。
怒った悠斗が私を連れて2階に上がろうとすると、お姉さんはまたそっと私に声をかける。
「小春ちゃん、ゴム持って来てる? 良かったらあたしが買ってきてあげようか」
「大丈夫ですよ、今日は持って来てますから」
2回目のやり取りなので面食らう事もなく言葉を返すと、お姉さんは満面の笑みを浮かべた。
「姉さん! 小春も! 変なこと言わないでくれよ、もう!」
今回は私も叱られてしまった。
悠斗の部屋は、当然ながら前回と全く同じだった。
気を利かせてくれたのか、それとも私たちの様子をうかがいに来たのか、お姉さんがホットココアを作って来てくれたので二人で飲む。
2人でベッドに腰掛けていると、何だか妙にかしこまっちゃう。
悠斗もすごく緊張しているみたい。
本当なら思い出話をしたり、昔みたいに二人で遊んだりしたいんだけど、今は仕方ないよね。
今話さなければならないのは、さっきの森谷君が犯人だったという事。
「本当に、見間違いじゃないのか?」
「確かに見たんだもん。美術準備室で悠斗と喧嘩して、逃げていく所」
「うーん……まあアイツとはたまに喧嘩する程度には仲が良いけどさ、殺される覚えはないぞ」
「友達なの?」
「まぁな。今日だって本当は何もなければ一緒にカラオケに行くつもりだったんだ」
「じゃあ殺される原因になりそうな事は何もないって事?」
「ああ。今日は、な。もしかしたら明日何かあるかもしれないけど」
「明日……」
私は頭を悩ませた。
森谷君は悠斗と仲が良いらしい。
それに、殺される様な理由も今のところは無いらしい。
じゃあなんであんな風に、森谷君は怒りにまかせたみたいに悠斗を……?
明日、何が起きるって言うの……?
「あ……」
私は、ある可能性について思い当ってしまった。
あまり考えたくもない可能性。
「明日は、可奈子ちゃんが屋上から飛び降りちゃうんだ」
「え、あいつが?」
「うん、だから、何かそこから繋がって森谷君の動機になったりしないかな」
悠斗は口元を手で覆って少し険しい顔をした。
子どもの頃からの癖で、悠斗が長考に入った合図みたいなものだった。
悠斗はとても頭が良い。
私なんかよりもずっと。
突然の出来事なんかには弱いけど、こうやって色んな情報の中から推理するのが得意なタイプだ。
だから、私は悠斗にもっといっぱい色んな事を教えて、悠斗に考えて貰わないといけない。
「充分、動機になりえるかもしれないな」
「本当!?」
「森谷は、岡崎さんの事が好きだったんだ。片想いで、告白もしてないらしい」
「そんな……」
「だから、もし岡崎さんが誰かに殺されたりしたら……誰かのせいで死ぬような事があったら……」
悠斗は青い顔で呟く。
「森谷は絶対に犯人を追いつめて復讐のために殺すだろうな」
その言葉をどう受け止めていいか分からない。
でも、それは私にはこう言っているようにしか聞こえない。
悠斗が可奈子ちゃんを殺した犯人だ、って。
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