Scene15. 2月13日 (2週目) 昼

 いきおい、悠斗を抱きしめてしまった……。

 思い出すだけで顔が火照ってしまう。

 私は始業チャイムのおかげで我に返り、困惑する悠斗を解放した。

 続きは昼休みに、と耳打ちして逃げるように立ち去ってしまったけれど、悠斗はホームルームに間に合ったかな?

 悪い事しちゃったかも……。

 1回目の2月13日のときと同じように私は午前中の授業を真面目に受けた。

 あの後確か、ペットボトルのお茶を買ってから屋上で二人きりで話をしたんだ。

 ちゃんと落ち着いて、あの時と同じように2日間を過ごそう。

 そして、悠斗が望んだ平和なバレンタインデーにするんだ。

 お昼のチャイムが鳴ると、私はすぐに悠斗のクラスに行った。

 悠斗は私の顔を見て目を背けた。でも、耳が赤くなっている。

 可愛い。

 この2日間を先取りして余裕があるせいか、私はちょっと大胆な気持ちになっていた。

 悠斗をリードしている自分に、ちょっと酔っていたのかもしれない。

 だからまさか自分が選択肢を間違った行動をしているなんて、気付きもしなかった。

 悠斗を連れて屋上に行く。

 今日はいつもより寒いから誰もいない。

 ……はずだった。

「えっ……可奈子ちゃん!?」

 私は思わず声をあげた。

 可奈子ちゃんが、屋上に居た。

 そんな、どうして?

 たしかに1回目の2月13日のときには誰もいなかったのに。

「どこで、選択肢を間違っちゃったんだろう……」

 私は自問する。

 私が殺された時には、可奈子ちゃんが犯人だったらしい。

 でも悠斗が殺された時には可奈子ちゃんはその前に……。

 どちらの事も、可奈子ちゃん本人の前で悠斗に伝えるわけにはいかない。

 どこかほかの場所……校舎裏かどこかで二人きりで悠斗と話したい。

「行こう、悠斗……」

 私は悠斗の手を引いて校舎に戻る。

 可奈子ちゃんの冷たい視線が背中に刺さっていると知りながら。

「おやおや、宮間さん。それに城之内くん」

 校舎の階段を降りようとした所で、天木先生とすれ違った。

「あっ、こ、こんにちわ!」

 しどろもどろに応える。

「どうですか、二人とも。屋上で一緒に昼食でも」

「いえ、その、失礼します!」

 私は早く悠斗と2人になりたかった。

 何も言わない悠斗の手を引っ張って私は階段を駆け降りた。

 あれ、先生も屋上に上がっていく?

 今日は何だか、予定が狂うなぁ。

 私はあまり深く考えずに、なすがままの悠斗を連れてひと気のない所を探し求めた。


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