Scene13. 2月14日 放課後3

「なに……これ……」

 屋上、乾いた血痕。頭の中で何かが繋がりそうで、それでも私にはうまく考えられない。

「おか、ざき……って、可奈子ちゃんのこと?」

 私は目を見開いたままの悠斗に問いかける。

 悠斗が可奈子ちゃんを屋上に呼び出したの?

 助けるために?

 何が何だか、私にはもう分からなかった。

 校舎の外の喧騒と隔絶された準備室の中で、どれだけの時が過ぎただろう。

 私は、悠斗の事をやっと理解した。

 悠斗は私を助ける為に未来から来たんじゃない。

 今日、この日に死んでしまう誰かを助ける為に来たんだ。

 悠斗は、そういう人だった。

 助けられる人は誰でも助けようとする、ヒーローみたいな人だった。

 たまたま私が殺されたから、私を助けようとしてくれただけなのに、私は浮かれて、守って貰う事ばかり考えていたね。

「ごめん、悠斗……」

 思わず想いが口からあふれ出る。

 それはもう止まらなかった。

 言葉にならない想いを、私は吐き出し続けた。

「ねえ悠斗。私もヒーローになれるかな……」

 悠斗から渡されたペンダントを抱いて、祈る。

「私が、引き継ぐよ。悠斗」

 悠斗が果たせなかった想いを、今ならはっきりと理解することができる。

「悠斗が守りたかった世界を……私も守りたい! だからお願い! 私も……!」

 私も、この2月14日の惨劇から誰かを守りたい。

 あなたも、私も、誰も死なない世界を守りたい!

 私の意識は、光を吸い込むブラックホールの様に、ペンダントの中に吸い込まれていった。

 そして、私の1回目の2月14日が終わる。

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