Scene12. 2月14日 放課後2
赤。
赤赤赤。
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。
赤いペンキをぶちまけた様な色鮮やかな部屋の中で、首から赤い絵の具の様な液体をを噴き出している悠斗が横たわっていた。
え?
……は?
私は眼の前の状況が理解できない。
悠斗の下に広がる赤い水たまりはどんどん大きくなっていく。
生臭い湿った空気が胸いっぱいに広がる。
だめだよ、悠斗。
そんなところで寝ていたら、風邪引いちゃうよ?
ね、私を守ってくれるんじゃなかったの。
どうして、私を置いてこんな所に来ちゃったの?
だめだよ。ダメダメ。全然ダメ。
いくら私が殺されなかったとしても、
悠斗が死んじゃったら、意味無いじゃん。
チョコレートも渡してない。
私は恐る恐る悠斗に近づく。
口をパクパクしている。その度に喉の切れ込から赤い泡がコポコポと生まれる。
「ユウ……ト……?」
スカートが汚れるとか、そんなの考えてもいなかった。
私は水たまりに膝をおろして、悠斗に話しかけた。
「悪ぃ……どこかで……選択肢……」
ゴブッ、と水気の多い咳をして悠斗が弱々しく話す。
「間違っちまった……」
もう、その目には何も見えていないみたいだった。
「悠斗、悠斗が助けくれたんだね」
私はそっと悠斗の手を握る。
悠斗は喉を押さえていた方の手を自分の襟の中に差し込み、鎖が切れて血に染まった二重螺旋のペンダントを取りだした。
「助けられ、無かった……」
悠斗がペンダントを私の手の中にねじ込む。
同時に、校舎のどこかからボールがはじけるような音が聞こえた。
「助けるって……? 私じゃ、ないの……?」
悠斗は、私を助ける為に未来から来たんじゃなかったの?
私は聞きたい事がたくさんあった。
でも悠斗は最後にこう言い残した。
「おか、ざき……」
悠斗はもう動かない。
真冬の室温に、重ねた悠斗の手からどんどん熱が奪われていくのを感じた。
私はその手を温めるように、再び熱を取り戻して欲しいと願いながら強く握った。
ガサリ、と音がする。私が握っていた悠斗の手に何かが握られていた。
「これは……?」
もう動かない悠斗の手から小さな紙片を取り出した。
その紙片には、すっかり乾いて黒ずんだ血がべったりとこびりついていた。
辛うじてその中を読める。
『場所を変えよう
今日の昼休み
屋上で待つ
城之内』
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