Scene11. 2月14日 放課後1

 私は目の前が真っ暗になった。

 ……自殺?

 どうして、可奈子ちゃんが!?

 悠斗の話では、私を殺しに来るはずだったのに。

 私は大切な友達を疑ったばっかりに追いつめてしまったんじゃないかという罪悪感に囚われていた。

 結局その日は救急車や警察の車が中庭に入ってきて出入り禁止、屋上も封鎖された。

 そして生徒は昼休み直後のホームルームで全員一斉に下校する事になった。

 授業が無くなった事を喜ぶ生徒や、午後からの遊びの相談をする生徒もいた。

 ひどいよ、みんな。

 同じ学校の生徒が死んじゃったって言うのに、どうしてそんな平気で居られるの?

 ホームルームが終わると私は耐えられなくなり、悠斗を探して廊下に出た。

 廊下は、現場検証をする警察の人たちを上から眺める野次馬のせいで通りづらくなっていた。

 もうやだ、早く悠斗に会いたい。

 会って、安心したい。

 だってもう終わったんだよね。

 今日、私は死ななくて済むんだよね?

 そう肯定されたかった。

 悠斗のクラスは、他のクラスの生徒たちよりも幾分か真剣で空気が重かった。

 それもそのはず、自分のクラスメイトがあんな事になってしまったのだから。

 私は沈鬱な表情を浮かべるクラスの生徒たちの中から悠斗を探し出そうとしたけれど、見つからなかった。

 もしかしてすれ違っちゃったのかな。

 そう思って引き返そうとした所で、廊下の先の階段を下りていく悠斗の後ろ姿を見つけた。

 私の事はもういいの……?

 不信感が募る中、私は悠斗を見失わないように階段へと急いだ。

「……も気付いてたんだろう? 城之内」

「んな事、知らねえよ」

 階段をずっと降りた先、以前悠斗に連れ込まれた美術準備室の中から話し声が聞こえた。

「知らないわけが無いだろう! 証拠だってあるんだ! いい加減にしろよてめぇ!」

「なんだよ、勝手に死んだアイツが悪いんだろ……」

 悠斗と誰かが話をしている。

 隙間から覗こうにも、物音を立てたら気付かれてしまう。

「言ったな、てめえ! 絶対に許さねえ!!」

 ガシャン!

 大きな音がした。

 美術準備室の中で2人が争っている。

 どうしよう、止めなきゃ……!

 私が美術準備室の扉を開けようとした、その時。

 パシャッ

 扉の擦りガラスに突然、真っ赤な模様が現れた。

「あ、は、アアアアアアアアアッ!!」

 野獣のような叫び声。

 誰から叫びながら、私がいる方とは別の扉から出て行った。

 悠斗ではない誰か。

 扉を出たすぐ先の階段を昇って行ってしまった。

 ……じゃあ、悠斗は?

 今、準備室の中で何をしているの?

 どうして出てこないの?

 私は、何もありませんようにと祈りながら、誰かが開けて出て行った扉の方から恐る恐る準備室を覗きこむ。

 目に飛び込んできた光景は、

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