Scene10. 2月14日 昼
昼休みが来るのが待ち遠しかった。
もちろん時間が過ぎるということは事件が起きるその時が近づいてしまう事でもあったのだけれど、悠斗がわざわざ昼休みを指定してくれたのだからきっと大丈夫。
私はそう確信していた。
「小春、行こう」
昼のチャイムが鳴るとすぐに、悠斗が会いに来てくれた。
「うん」
私はすぐにお弁当を持って席を立った。
「今日も屋上で良いかな?」
私は悠斗が既に総菜パンなどを持っている事を確認して、階段の方へと誘った。
「ん……いや、今日はやめておこう」
悠斗は妙に口ごもって、屋上への階段に近づく事を嫌がった。
そして私も気付く。
可奈子ちゃんが階段を昇っていく姿が見えた。
今日私を殺す犯人だって悠斗が言っていた人だ。
確かに、迂闊に近づかない方が良いかも。
屋上の人目に付かない所でブスリ、なんて事になったら……。
私は悪い考えを振り払うように頭を振って、悠斗を連れて校舎の裏庭に向かった。
裏庭には誰もいなかった。
ひと気が無いのは怖いけれど、犯人の可奈子ちゃんが屋上にいるならたぶん大丈夫、だよね?
私はお弁当を広げながら、聞きたかった事を悠斗に聞いた。
「私、今日、殺されちゃうんだよね?」
「ああ」
「犯人は、可奈子ちゃんなんだよね?」
「そうだ」
「どうやって殺されたの?」
「……後ろから、何かで刺されて」
「いつ殺されたの?」
「放課後だ……なあ、もうやめにしないか」
「何で? 私、ちゃんと知りたいよ」
「だって、お前、殺されるのに……何で平気な顔をしてるんだよ!」
「平気じゃないよ。それに、悠斗が守ってくれるんでしょ?」
「……そうだけど」
「悠斗にとっては、私は一度死んでるかもしれないけど、私はまだ生きてるんだよ」
「ああ」
「何も分からずに、殺されそうになって、助けられるなんて、嫌だ」
「……悪かった」
「……」
聞きたい事は聞けたような、聞けない様な。
やっぱり、どうして私が殺されちゃったのかはわからなかった。
その後、何となく黙ったまま2人でお昼ご飯を食べて、教室に帰ろうとした時に学校のどこかでボールがはじけるような音がした。
そしてすぐに悲鳴のような人の声がドドドッと響いた。
騒ぎを聞いて私たちが中庭に出ると、そこはもう人だかりができていた。
ざわめきの中から聞こえる言葉と……。
地面に落ちている見慣れない赤い紙袋で……。
私は、理解してしまった。
可奈子ちゃんが、飛び降り自殺したんだ。
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