Scene07. 2月13日 夜

 結局その日は悠斗の部屋に泊まるわけにもいかないので、少し話をした後に私は自分の部屋に帰ってきた。

 私は明日、殺される。

 それも、大好きなお友達の可奈子ちゃんに?

 悠斗がそんな嘘をつくわけがない。

 それに、私は見てしまった。

 あの二重螺旋のペンダント……。

 私は自分の机の鍵のかかった引き出しを開ける。

 その奥に丁寧にしまい込まれた小さな箱を取りだした。

 開けた形跡はない。

 そもそも、ぐちゃぐちゃに突っ込まれた引き出しの奥に入っていたので、それを荒らさずに取りだせるわけもない。

 私は小さな箱を軽く振ってみる。

 あるべき重さを感じられない。

 剥がされた爪痕もないシールを破いて箱を開けると、そこにはペンダントだけがなかった。

 とても不思議なことだけど、あのペンダントは確かに私が2月14日に悠斗にあげる予定だった物らしい。

 どういう仕組みなのかは分からないけれど、多分考えても分からない。

 とにかく、明日の私から貰ったペンダントの力で、悠斗は今日に帰って来たんだ。

 私を守るために。

 さっき、悠斗と相談した事を思い出してみる。

『小春は何もしなくて良い。岡崎は俺がなんとかする。いつもどおりにしていてくれたら、何も起きずに済むはずだ』

『危ないよ……』

『大丈夫。先生に持ち物チェックしてもらって、刃物を取り上げて貰えば、いくらなんでも手出しはできなくなるだろ』

『私が明日、学校を休むとかは?』

『ダメだ。岡崎が小春の家に来るかもしれない』

『放課後だって来ようと思えば……』

『それに明日は小春は学校を休まなかった。違う事件が起きてしまったら、守りきれないかもしれない』

『とにかく、岡崎に事件を諦めさせるんだ。それで全部解決できる』

『ねえ……?』

『なんだ?』

『どうして、可奈子ちゃんは私を殺そうとしたの?』

『……それは、俺も分からない。明日本人に吐かせるつもりだ』

『そう、だね』

 なんとなく、腑に落ちない感じがして気持ち悪かった。

 今日会った可奈子ちゃんは、私を殺したがっているようには見えなかった。

 明日になれば、何かわかるのかな?

 難しい事がいっぺんに起き過ぎて、私はちょっと混乱していた。

 だから、

 これをきっかけに悠斗ともっと仲良くなりたいな、なんて思いながら、

 そんな呑気なことを考えながら、

 ゆっくりと、まぶたを閉じた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る