Scene02. 2月13日 昼1

 始業のチャイムが鳴って一度解放された私は、昼休みになったらまたすぐに悠斗に呼び出された。

 さっきキツく抱きしめられた肩が、悠斗の顔を見た時に少し疼いた。

「小春……あの、さっきは……」

 叱られた子犬みたいに顔色を覗ってくる悠斗。

 ちっちゃな時から全然変わってない。

 さっきはあんなに強引だったのに。

「いいって。屋上でお昼食べよっか」

「えっと……うん」

 悠斗はもう先に購買でパンを買って来ていた。

 私はクラスメイトの冷やかしをかわしながらお弁当を持って廊下に出る。

「待って、自販機で飲み物買ってくる」

「あぁ、分かった」

 悠斗は私を守る騎士にでもなったかの様に、しっかりと後ろからついてきた。

 可笑しいの。

 いつもなら「先に行ってるぞ」ぐらい言うのに。

 やっぱりアレ、本気だったのかな。

 私が自販機コーナーでペットボトルの温かいお茶を買っている時も悠斗はあたりを警戒していた。

 生徒1人ひとりの顔を確かめるように眺めている姿が、自販機のガラスに映っていた。

 何を警戒しているのかな。

 もしかして、その、私を殺しに来る犯人を知っている……?

 私は、悠斗の言葉をすっかり信じ込んでいる自分に気付いた。

 そして屋上へ辿り着く。

 私がここに誘ったのだけれど、都合よく誰もいなくて良かった。

「へー、珍しい。今日はちょっと寒いからかな?」

 いつもなら誰かしら居るはずの人気スポットだったのに、誰もいないなんて。

 悠斗も少し驚いていたみたい。

「……どこかで選択肢ミスったかな」なんて変なことを言いながら、悠斗はあたりを警戒してベンチに座っていた。

「それじゃ、詳しく教えてくれる?」

 私は寒さを少しでもしのぐために悠斗のすぐ隣に座ってお弁当を開ける。

 悠斗は表情を強張らせたけど、溜め息をひとつついてから私に向き直った。

 いつもより距離が近い。悠斗の真剣な眼が私をじっと見ていた。

「信じられないかもしれないけど」

 悠斗はつまらない前置きを挟んでから言った。

 何を言われたって、信じてあげるつもりなのに。変なの。

 でも確かに、簡単には信じられそうにない話だったんだ。

「俺は、明日から来たんだ。明日の2月14日。小春が殺された日から」


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